2015 Fiscal Year Research-status Report
破砕帯・断層帯内に含まれる鉱物ナノ粒子に着目した新しい活断層評価法の確立
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15K13578
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣野 哲朗 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70371713)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 活断層 / 最新活動時期 |
Outline of Annual Research Achievements |
破砕帯・断層帯の活動性の評価では,地表付近に堆積している第四紀堆積層のズレが唯一の判断基準である.しかし,人工的な削剥などによって第四紀堆積層が存在しない場合,その評価は極めて困難である.そこで,本研究では,この大問題を打開すべく,破砕帯・断層帯内に含まれる鉱物ナノ粒子に着目した新しい活断層評価法の確立を目指している.断層帯における鉱物粒子の粒径減少や微粒子の存在は古くから報告されているが,活断層からの初めての報告は1999年に活動した台湾チェルンプ断層である.そのため,「鉱物ナノ微粒子に着目した新しい活断層評価法の確立」の一般化・普遍化には,第四紀での活動履歴が明瞭で,かつ様々なセッティング・岩相に発達した断層での分析が不可欠と言える.そこで,H27年度には,1596年慶長伏見地震で活動したことが明らかになっている有馬高槻構造線を対象とし,粉末X線回折法とRockJockプログラムを組み合わせた鉱物組成の定量分析,走査型・透過型電子顕微鏡観察を実施した.その結果,この活断層には,10数wt%の非晶質微粒子が含まれることが明らかになった.さらに,非晶質微粒子の水への溶解反応を速度論的に解析した結果,約1000年間は保存されうることが明らかになり,これは先の400年前の活動と整合的である.以上の結果は,「非晶質微粒子を含む破砕帯・断層帯≒1000年前以降に活動した活断層」という図式が成り立つ可能性を示唆している.H28年度には,速度論解析に用いるパラメータを実際の断層試料で構築し,上述の保存期間の精密化を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の報告」にて記述したように,第四紀での活動履歴が明瞭である有馬高槻構造線において,鉱物ナノ粒子を確認することができた.また,暫定的に,過去の文献値を用いた速度論的解析を実施した結果,「非晶質微粒子を含む破砕帯・断層帯≒1000年前以降に活動した活断層」という図式が成り立つ可能性を見い出すことが出来た.そのため,H27年度は当初の計画通り,順調に遂行できたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
鉱物ナノ粒子を用いた新たな活断層の活動性評価の基準の確立には,その溶解反応の速度論的解析が決定的に重要である.そこで,H28年度には,実際の断層試料を用いた水熱反応実験によって,速度論パラメータを正確に決定することを目指す.
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