2016 Fiscal Year Research-status Report
AEとECの複合測定を用いた高圧下における固液2相系の剪断不安定化に関する研究
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15K13596
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保 友明 九州大学, 理学研究院, 准教授 (40312540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 工 九州大学, 理学研究院, 教授 (90214379)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 稍深発地震 / 深発月震 / 高圧変形実験 / 固液2相系 |
Outline of Annual Research Achievements |
脆性―塑性転移を超えた深さ約50km―300kmで発生する稍深発地震の原因として蛇紋石の脱水脆性化が有力なメカニズムとして挙げられるが、矛盾する結果も多く未だに高圧下での断層形成条件は明確になっていない。これまではアンチゴライト単相を用いて比較的小さい歪み領域において変形実験を行った場合が多い。そこで本研究では現実のプレート内部環境をふまえ、部分的に蛇紋岩化したかんらん岩の大歪み領域での変形挙動に着目し、アンチゴライトとオリビン二相系試料を斜め45度に切り出した二つのAl2O3ピストンで挟み込み、圧力6GPa付近で歪みが1を超えるような大歪みせん断変形実験を行った。回収試料には下ピストンの断面に沿うように変形の局所化が起こり試料全体にわたって1つの大きな亀裂も見られた。亀裂部の上下には引き伸ばされたstrain markerの痕があったため、試料が大歪みの変形をした後に亀裂が生じたと考えられる。この亀裂がせん断不安定による断層運動であるのかどうかは、今後AE測定を行うことにより明らかにする必要がある。同じ圧力条件で一軸圧縮変形した試料には変形の局所化は見られず、本研究では二相系の大歪み領域に特有の変形の局所化が起こっていることが示唆される。このような大歪みを経験した2相系試料が脱水時にどのような変形挙動を示すか、今後放射光その場観察とAE測定により明らかにする必要がある。 また部分溶融時の変形挙動と深発月震の関連性に着目した実験では、カンラン石と少量の玄武岩メルト2相系の高圧下静的環境における組織観察を含めた焼結実験を行っている。深発月震が起こっている圧力3-4GPaでは玄武岩メルトがカンラン石の粒界を濡らしていることが確認された。この試料を出発として今後変形実験を行い、少量でも連結したメルトが変形挙動に与える影響を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関連する国外の研究グループの成果もふまえ、稍新発地震に関しては大歪みとカンラン石ーアンチゴライト2相系に焦点をあてた実験を進めてきた。2相系剪断変形実験に成功しつつあり、また剪断不安定化を示唆するような結果が得られてはいるが、脱水反応も含めたAE測定実験に着手できていない。カンラン石ー玄武岩メルト2相系実験も含め、定量的な変形実験に耐えうる均質な組織をもった2相系試料の焼結実験に予想以上の時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
国外の研究グループが行っているほぼ同手法の実験は比較的低圧下ものであり、約10GPaまでの条件で起こる稍深発地震発生に直接つながっているかは未だ疑問である。本研究では、より高圧条件下におけるカンラン石ーアンチゴライト2相系の大歪み領域の変形挙動に着目し、剪断変形実験とAE測定および放射光脱水変形実験を組み合わせながら進めていく。カンラン石ー玄武岩メルト2相系についてもメルトが固相粒界を濡らすような圧力条件下においてAE測定を組み合わせた剪断変形実験を行う。これまでの結果をふまえ、また研究予算も限られていることから、いずれのテーマにおいても高圧下における固液2相系の剪断変形挙動とAEの同時測定に集中して実験を行う。
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Causes of Carryover |
研究費はほぼ当初の予定通りに使用したが、若干の次年度使用額が発生している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を足し合わせても当初の予定額とほぼ変わらない。そのため当初の予定通り使用する。
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