2016 Fiscal Year Research-status Report
窒化物地球化学の創成:高温高圧実験による地球深部における窒素の存在状態の解明
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15K13600
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鍵 裕之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70233666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 彩子 名古屋大学, 環境学研究科, 学振特別研究員(PD) (80570506)
岡田 卓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (90343938) [Withdrawn]
佐野 有司 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (50162524)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 窒素 / マントル / 高温高圧実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素は地球の大気の主要成分で、地球表層では生命活動にも欠かすことのできない主要かつ重要なな軽元素である。地球全体の化学組成をその原料となった隕石の化学組成と比較すると、窒素は桁違いに枯渇していることが知られており、地球の形成・進化過程で窒素が地球外に飛散したか、地球深部に現在も取り込まれているという二つの可能性が考えられている。我々は地球深部を構成する鉱物中に窒素が取り込まれるかどうかを高温高圧実験に基づいて検討した。研究はレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いる高温高圧実験、そしてマルチアンビル高圧発生装置を用いた高温高圧実験によって行った。ここでは主にレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた研究実績について述べる。上部マントルを構成する代表的なケイ酸塩鉱物であるかんらん石、斜方輝石を窒素あるいはアンモニア流体を圧力媒体としてダイヤモンドアンビルセル内に封入した後、赤外線レーザーで加熱をした。加熱回収後の試料は、X線回折、電子顕微鏡観察、XPS(X線光電子分光)測定などから評価を行った。その結果、アンモニアを主成分とする鉱物種は見いだされなかったが、試料中に窒素が濃縮されている部分があることが明らかとなった。これまで地殻を構成するケイ酸塩鉱物中には窒素がカリウムイオンを置換するアンモニウムイオン(NH4+)として取り込まれていることが知られている。本研究で行ったXPS、マントル鉱物にはアンモニウムイオンだけでなく、中性窒素(分子状窒素)と窒化物イオン(N3-)として取り込まれることが明らかとなった。今後は温度圧力条件を下部マントルに相当する条件まで拡張し、酸素分圧も制御して研究を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マントル鉱物に窒素が取り込まれうること、そしてその存在状態がこれまで地殻の鉱物で考えられてきた窒素の取り込み機構と異なる可能性が明らかになり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は温度圧力条件をさらに拡張して実験を継続していく予定である。本研究によって研究の立ち上げに成功したので、将来的にはより大きな新たな研究課題を提案していきたい。
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Causes of Carryover |
研究を進める過程で、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルによる高温高圧実験では、下部マントルの酸化還元状態を再現しながら実験を行うことはきわめて困難で、マルチアンビル高圧発生装置を用いた実験が有効であることが判明した。既にマルチアンビル高圧発生装置を用いた実験を開始しており、その有効性を確認した。次年度まで実験を継続することが当初の研究目標を達成するためには不可欠であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主としてマルチアンビル高圧発生装置を用いた下部マントル条件での窒素とケイ酸塩鉱物との反応を観察する実験を行い、研究経費は主として実験を遂行するための消耗品費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)