2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13602
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 哲也 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (00467028)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 拓司 国立天文台, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (10270456)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | プレソーラー粒子 / U-Th核年代学 / 銀河化学進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
U-Th核年代法によるプレソーラーの年代測定には、U・Th濃度が極めて低い鉱物の測定が必要となる。しかし、現在の技術では1pg以下のU・Thを高精度で定量することは非常に難しい。そこで本年度は、トータルエバポレーション同位体希釈TIMS法を用いることで、微小量U濃度の定量分析法を確立させることを目標に、研究を進めた。まず、TIMS測定中に最も強いビームが得られる測定条件(イオン化促進剤など)の検討を行い、colloidal silicic acidを用いてUO2+を発生させる方法が最も適していることを確認した。次に、TIMS測定中に発生するブランクを極限まで低下させるため、イオン化促進剤などの試薬をイオン交換樹脂に通すことで、Uブランクを1 fg以下にまで低下させることに成功した。その結果、 1 pg, 0.5 pg, 0.2 pg, 0.1 pg のUを、それぞれ再現性 0.45%, 0.44%, 0.77%, 2.2%で測定可能にした。相対誤差はそれぞれ0.23%, 0.15%, 0.24%, 0.67%であり、いずれも再現性以内であったため、確度も問題ないことが確認された。
一方理論面では、プレソーラー粒子の中で最も精力的に研究されているシリコンカーバイド(SiC)の起源を再検討した。銀河内微粒子の移動、成長、破壊に関するシミュレーションを用いて、最も存在度の高いmain streamタイプのシリコンカーバイドが示すSi同位体比の再現を試みた。その結果、実測値を説明するには太陽系を形成した粒子が現在の太陽系の位置(銀河中心から8 kpc)よりも内側(銀河中心から約6 kpc)に由来することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同位体希釈TIMS法を用いた極微小量ウランの定量分析を完成させることは初年度の大きな目標である。トータルエバポレーション法を用いて <1 pgのウランを測定可能としたことは予想を上回る結果であった。一方、極微小量トリウムの測定はウランほど進んでおらず、次年度の課題と言える。一方、理論面では銀河内における粒子の運動に関し、現在の太陽系より内側から来た可能性があるという一定の制約を与えたことは大きな前進である。このように、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
TIMS測定中に発生するウランブランクを1 fg以下に低下させることには成功したが、酸を用いた試料の分解、およびイオン交換樹脂を用いたウランの分離作業中に発生するウランブランクの量は約100 fgであり、更に低下させる必要がある。また、極微小量トリウムの分析技術は確立していないため、本年度中に立ち上げる必要がある。ウラン同様、トリウムもブランクの混入を低下させる工夫が必須である。一方、理論面では太陽系を形成した粒子の銀河系内における発生位置を念頭におき、粒子が形成されたとき獲得したU/Th比を時間の関数として求めることに挑戦する。
|
Causes of Carryover |
分析法の開発において、今年度は極微小ウランの測定法を完成させたが、トリウムの測定法には手をつけられなかった。そのため、トリウムの分析に必要とされる試薬など、消耗品購入に必要な経費が予想より低かったことが原因である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度は今年度完成させることのできなかった極微少量トリウムの分析法を集中的に開発する。その際、試薬・テフロンビーカー・フィラメントなど、多くの消耗品を必要とするため、差額をあてることとする。
|