2015 Fiscal Year Research-status Report
中赤外レーザーを用いた革新的氷床内部連続分析システムの基礎研究
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15K13605
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
櫻井 俊光 国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (00581810)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 氷 / 雪 / レーザー / 融解 / 掘削 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー照射強度にともなう氷と雪の融解速度を計測した結果、レーザー照射強度に比例して氷の融解速度が速くなった。しかし、レーザーのエネルギーが氷の融解に全て使われたと仮定した場合に比べて、実際の融解速度はその50%程度であった。これは、融解水の影響と、照射されていない氷から熱が流れたことが起因している。照射角度を変化させると、穴に融解水が溜まり融解速度が低下することも解った。融解水の影響である。レーザー掘削では、鉛直下方に向けて氷に照射することを想定している。そのため、融解水が穴に溜まると掘削できないことが想定される。そこで本研究は、ファイバーに接続させて、ファイバーの先端が常に融解水の影響を受けないファイバー型レーザー掘削システムとして提案した。レーザー掘削ではレーザー光が空間に照射される際に、必ず対象となる氷に近接している必要がある。またこれに伴う出力、照射範囲も考慮する必用がある。さらに、市販のCO2レーザー用のファイバーは伝送損失が高いため、市販されている高出力CO2レーザー光源(>1kW)を利用したとしても、100m程度までしか掘削することができないことも計算で明らかになった。したがって、ファイバーの伝送損失等を考慮すればより近赤外のレーザー、たとえばEr:YAGレーザーなどを利用した方が掘削可能深度がより深くなると考えている。 氷の掘削には、高平均出力レーザーが必要となる。本研究は実際に雪と氷を融解させる実験だけでなく、レーザー開発も並行して進めている。高平均出力固体レーザーでは高励起されたレーザー媒質の冷却方法が直近の課題となっている。冷却されたレーザー媒質と液体窒素界面における液体窒素の沸騰をレーザー蛍光分光法を利用して計測することができた。液体窒素の沸騰状態(核沸騰、膜沸騰)がレーザービーム品質に関係することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CO2レーザー照射による氷と雪の融解実験で、定量的なデータが得られた。過去の掘削技術を精査して学術論文として投稿して最近受理された。本研究は、レーザーで氷と雪が融解可能であることを示した初めての実験である。
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Strategy for Future Research Activity |
波長の異なるレーザーを利用する必用がある。そこで、本研究では他研究機関と協力して氷の融解実験を行いたいと考えている。また、レーザー光が積雪内部をどのように伝搬するか、明らかにするために、光線追跡を導入することを思案中である。たとえば、積雪サンプルのX線CT画像を取得してCAD情報とし、ソフトウェアで光線追跡を行うことが可能になるかもしれない。
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Causes of Carryover |
第57次南極地域観測隊夏隊(2015年7月~2016年3月)として南極に行くことになったため、期間中に実験を行うことが困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査した結果、CO2レーザーの波長ではなくより近赤外に近い中赤外帯域のレーザーが妥当であることを示した。そこで本研究では他機関の協力を仰ぎ、氷の融解実験を行うことを予定している。また、可能であればX線CT画像を取得したあとにソフトウェアで雪の中を伝搬するレーザーの光線を追跡したいと思案している。
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