2015 Fiscal Year Research-status Report
フーリエ変換型2次元多色多パルス相関法の開発:多段階・多光子過程光反応過程の解析
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15K13626
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
和田 昭英 神戸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20202418)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 3ビーム交差項 / 二重共鳴2次元分光 / 白色光励起 / フーリエ変換分光 / 多色多段階過程 / 2パルス相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複数の波長の関与した光化学反応を多角的に検討・理解するためのフーリエ変換型多色多パルス相関法の開発を行うことである。本年度はこの目的とするシステム作製に向けて、以下にあげる2つのモジュールの作製と原理検証を行った。 ①複数の波長の関与した励起反応過程を選択的に検出するためのシステムとして、3つの異なる波長の励起光の交差項の選択的検出システムの作製。3つの異なる波長を持つレーザービームを照射する組合せを変えて過渡吸収を測定することで、3波長交差項、2波長交差項を選択的に検出するシステムの作製を行った。原理検証実験としてアゾベンゼン誘導体の一種であるメチルイエローの光異性化反応について検討した結果、2段階反応、3段階反応を選択的に検出することに成功した。作製したシステムは論文として“分光研究”に投稿して、現在審査結果待ちである。 ②励起光としてレーザー光と白色光を用いた白色光励起二重共鳴2次元過渡吸収スペクトル観測システムの作製。レーザー光と白色光の両方の光が関与した過程をフーリエ変換を通して観測できることを確認するために、レーザー光がONの場合のインターフェログラムとOFFの場合のインターフェログラムの差をとることで、二重共鳴2次元過渡吸収スペクトルの選択的観測システムの作製を行った。原理検証実験としてアゾベンゼン誘導体の一種であるズダンレッド7Bの光異性化反応について検討した結果、二重共鳴2次元過渡吸収スペクトルが選択的に観測できることを確認し、6月の国際会議で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2ビーム交差信号及び3ビーム交差信号スペクトルの選択的検出が原理的に可能であることが確認された。また、レーザー光と白色光を用いた白色光励起二重共鳴2次元過渡吸収スペクトルの選択的観測も可能であることが確認された。これらシステムを融合して、時間分解能を加えたシステムへと組み上げていく段階にある。時間分解能を加えるための一つの方法としては、励起白色光光源としてとしてフェムト秒再生増幅器出力を水フローセル照射して得られるコヒーレント白色光を用いる。また、多パルス相関信号を選択的に検出するためにはフェムト秒パルスかその高調波を用いる。そのためのシステムの構築を行っている。具体的にはフェムト秒再生増幅器出力を3つに分岐し、そのうちの1つは水フローセルに照射してコヒーレント白色光を発生させ、残る2つのビームで基本波・高調波を発生させる。発生させたコヒーレント白色光の1部をビームスプリッターで分岐してプローブ光として用いる。2パルス・3パルスの各交差項信号の抽出を行うために各パルス光路上にはシャッターを設けてON/OFFを行い、照射パルスの組み合わせを変えた測定を行うことで必要とする交差項(相関信号)を選択的に観測する。また、各パルス光路上に光学的遅延回路を設けて、コヒーレント白色光と励起パルス・プローブパルスの照射タイミングを調節する。現在は、白色光発生の光路と励起パルスの光路を構築している段階にある。これら光パルスのON/OFF制御と遅延光路の制御及び干渉計の制御やフーリエ変換を統括して行うソフトウェアの開発も同時に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在進めているシステムの構築を行う。システムの完成次第、3パルスが関与する過程と2パルスが関与する過程があることが知られている分子系・反応系を用いて原理検証を行う。具体的にはローダミン6Gを800nmで2光子励起して得られる蛍光に加えて,励起状態からの吸収による蛍光減衰が生じることが知られている。この現象を利用し、2パルス交差項と3パルス交差項の同時選択性の有効性の検証と感度等の性能評価を行う。得られた結果にしたがってシステムの改良を行っていく。現段階で懸念されることは、コヒーレント白色光や励起パルスの不安定性に起因するS/Nの低下が挙げられる。特に、フーリエ変換分光では、励起パルス強度やプローブ光強度の不安定性に起因する時間的変動が実際に生じている反応によるプローブ光強度変化と区別がつかないため、励起パルスやプローブパルスの時間的変動は極力抑えるか積算を重ねて時間的変動を均す必要がある。また、励起に用いるコヒーレント白色光の強度が不十分な場合も積算を重ねてS/N比を上げていく。それでも充分なS/N比が得られなかった場合は、励起白色光とプローブ白色光にフラッシュランプを用いることで、励起強度の増大とプローブ領域の拡充を図る。フラッシュランプを用いることによる時間時間分解能の低下に関しては、2本の励起パルスの時間分解能で決まる2パルス相関測定に的を絞ることで、本システム作製の目的上で大きな問題にはなるとは考えにくい。
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Research Products
(4 results)