2017 Fiscal Year Annual Research Report
Thermodynamic study of liquid droplets in a vacuum and their application to bio-molecular analysis
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15K13627
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺嵜 亨 九州大学, 理学研究院, 教授 (60222147)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液滴 / 真空 / 水 / エチレングリコール / 蒸発冷却 / 過冷却液体 / 凍結核生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に見出した凍結時に水液滴が破砕される現象について、その再現性を確認し、機構解明に取り組んだ。この破砕現象は、水液滴の凍結が内部よりも表面から進むことを示唆する結果であり、内部凍結時の体積膨張で引き起こされたと考えられる。そこで、蒸発冷却モデルによる数値シミュレーションと実験結果から、この仮説の検証を行った。まず、水液滴は233~236 Kの温度範囲で凍結したと推定された。この温度領域では、均質凍結核が生じた後に液滴全体の凍結が進行すると考えられており、また、凍結核生成速度は1 Kの温度低下でおよそ30倍増加することが知られている。液滴内部の熱伝導を考慮したシミュレーションで、凍結時に、中心部よりも表面の温度が2 Kほど低いことが分かった。さらに、液滴内のどの部分で凍結核が生成する確率が高いかを計算した結果、液滴半径の1/10までの深さの表面近傍で凍結核が生じる確率が9割以上と見積もられた。以上の解析から、真空にさらされた液滴表面からの水分子の蒸発で、表面近傍の冷却が内部よりも急速に進む結果、均質凍結核の生成確率が高まった液滴表面が優先して凍結すること、その後に凍結する内部の体積膨張で液滴が破砕に至ることを結論した。 真空中の液滴を生体関連分子の解析に適用することを応用展開の一つに位置づけており、純水ばかりでなく生理条件下の水溶液も重要な研究対象である。そこで、無機塩の水溶液について液滴実験を試みた。その結果、無機塩の添加により水液滴の蒸発速度が低下することを見出した。すなわち、生理条件の溶液は純水よりも長く真空中で液相状態を保持するものと予想した。 以上のように、研究期間を通じて、蒸気圧の低いエチレングリコールでは1分以上、蒸気圧の高い水においても10 ms程度の間、液体を真空中で扱えることを明らかにし、真空中での液体利用を推進する基礎となる成果を上げた。
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