2015 Fiscal Year Research-status Report
新規求核的ホウ素化反応による含ホウ素有機材料の合成
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15K13633
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90282300)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ホウ素化反応 / 電子材料 / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウ素官能基が組み込まれたπ共役系は特徴的な電子特性、興味ぶかい光物性などを示すことから近年研究活発である。われわれは、以前、ホウ素基を求核的反応剤として共役系にホウ素官能基を直接導入することができる全く新しいシリルボラン/塩基による求核的ホウ素化反応(J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 19997, およびJ. Am. Chem. Soc., 2014, revised)を発見した。本研究はこの方法を含ホウ素炭素共役系の合成に拡張しようとするものである。具体的には、Ph2MeSi-BMes2と塩基を用いた4-ethylbromobenzene 2aにおいて、種々反応条件の検討を行ったところ、溶媒として1,4-dioxane/hexane (1:1 v/v)、塩基としてNa(O-t-Bu)を1.2等量、50℃で反応させることで、高収率かつ高いホウ素置換選択性でホウ素置換反応が進行することを見出した。次に最適化した反応条件を用いてdimesitylborylationの基質適用範囲の検討を行った。Bromobenzene 2bや2-bromonaphtalene 2c、メタ位にメチル基を持つアリールブロミド 2dなど立体障害の小さな基質では高収率かつ高いホウ素置換選択性で反応が進行したが(2b: 94%, B/Si = 90 : 10, 2c: 78%, B/Si = 90 : 10, 2d: 90%, B/Si = 92 : 8)、オルト位にメチル基を持つ基質 2eでは収率、選択性が大きく低下した (46%, B/Si = 67 : 33)。次に官能基を持つ基質の検討を行った。電子豊富なメトキシ基やジメチルアミノ基を持つ基質でも良好な収率かつ高い選択性で反応が進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とするホウ素化反応について、基本的な反応条件の最適化は終了し、現在これを論文として海外一流誌に投稿した。平成27年度の研究計画では「ジアリールシリルボラン反応剤の一般的合成法の確立とアリールホウ素化合物のホウ素化:ホウ素上に様々な芳香族基をもつシリルボランの合成法の確立とそれぞれを用いたトリアリールホウ素型π共役系の合成」であるが、まったく予定通りに進行している。二年目の研究計画では、より一般的な共役系有機ホウ素化合物を合成する予定であり、それに向けての準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素求核剤が合成困難な巨大π共役系のホウ素化反応:カーボンナノチューブやグラフェン前駆体や多数のブロモ基をもつハロゲン化アリール基質のホウ素化反応はチャレンジングであるが、これに挑戦する。これらのホウ素化化合物は有機エレクトロニクス分野の基盤材料として有望であるが、ホウ素化の中間体である高活性有機金属化合物への変換(リチオ化)が、基質の溶媒への溶解性が低いために不可能である。このような基質に対して、シリルボランによる求核的ホウ素化を適用する。 ジシリルアリールボランは、シリル基を2つもつ化合物である。この化合物の合成方法を確立する。この化合物の1つのシリル基が芳香環への求核反応に利用された後でも、残っているもう一つのシリル基を利用して、ホウ素基を連続的に芳香族ハロゲン化物に導入することを目指す。 官能基化された平面固定化トリアリールボランの合成:ホウ素を平面固定化した化合物は、高い安定性を示すが、従来の合成法では、強力な求核剤をが必要なため、求電子性官能基の導入が困難である。そこで、シリルマスク法によるホウ素置換反応後、C-Hアリール化による標的分子の合成を試みる。
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Causes of Carryover |
有機合成試薬などの消耗品を3月納品で購入したため。若干ではあるが、当初予定よりも購入量がが少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
同上の理由による
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