2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘリセン骨格に基づく金属イオンのキラル配列制御・焼成と電磁気特性
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15K13637
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 京子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60222197)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ヘリセニルアニオンを有する金属錯体の調製 平成27年度に9H-シクロ-ペンタ[1,2-c:4,3-c’]ジフェナントレンを脱プロトンすることでヘリセニルアニオンL*を発生させ、ペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウム(II)トリフラート(Cp*RuOTf)と反応させて、シクロペンタジエニル金属錯体(L*RuCp*)を得た。また、一つのRu(II)イオンに2枚のヘリセンが配位した錯体L*2Ruの合成にも成功した。これらの成果の上に立ち、平成28年度には、ルテニウムだけでなく、鉄を用いたL*2Feの合成にも成功した。これらの成果については学会発表ならびに論文発表をおこなった。併せて、本研究の遂行中に、予期せず1枚のヘリセンにRu(II)イオンが二つ配位したカチオン性錯体[(Cp*Ru)2L](OTf)も得た。
2.新規ルテニウム錯体の燐光特性 カチオン性錯体[(Cp*Ru)2L](OTf)は燐光発光を示した。従来、発光挙動を示すルテニウム錯体は、2価のルテニウムにsp2混成軌道の窒素配位子の配位している錯体に限られていた。本研究で得られた錯体はシクロペンタジエニル基またはアレーン基のみが配位した錯体で、このような形の物質で燐光発光が見られた例はない。本研究ではさらにこの発光の由来について理論科学的な考察をおこない、配位子を介した二つのルテニウムイオン間の相互作用が、発光に重要なはたらきを示すことを明らかにした。この成果については現在最終的な実験をおこなっており、平成29年度に論文報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。当初の予定にしたがって、キラルなヘリセン型シクロペンタジエニル配位子の光学活性体を得ており、その錯体合成についても予定通りに合成できた。今後、諸物性評価に展開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ルテニウム錯体については、特に当初の目的であったキロプティカルな性質について調べる。また、鉄錯体の合成も試みる。さらに、ルテニウム、鉄それぞれの2価イオンの錯体が単離できた段階で、各錯体の1電子酸化を試み、2価イオンと3価イオンの相互変換による構造の変化についても調べる。
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Causes of Carryover |
研究遂行中に新たな知見を見出したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として物品費として使用予定である。
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Research Products
(5 results)