2015 Fiscal Year Research-status Report
含高周期14族元素d-π電子系の構築とその官能基修飾による機能化
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15K13640
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70362390)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | d-π電子系 / ゲルマニウム / クロロゲルミレン / クロロゲルミレノイド / フェロセニル基 / 高周期典型元素 / 高周期14族元素 / ゲルミルアニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属同士を有機π電子系で架橋した「d-π電子系化合物」は、新しい有機機能性材料として期待されるのみならず、混合原子価状態のモデルとして基礎化学的な観点からも注目されている化合物群である。本研究課題では、有機π電子ユニットの新展開としてこれまでに無い高周期典型元素π電子系で遷移金属d電子系を架橋した「含高周期元素d-π電子系化合物」を合成・単離し、それらの性質の解明し、高周期典型元素π電子系の電子輸送能の評価と特異なd-π電子系の機能解明という観点で基本的な概念を確立することを目的として研究を行った。二つの遷移金属ユニットを高周期14族元素π電子系で架橋した新規なd-π電子系を標的化合物とし、本年度は特に遷移金属ユニットとして、立体保護能を持つフェロセニルユニット(Fc* = 2,5-bis(3,5-di-t-butylphenyl)ferrocenyl)を用い、まずは様々な官能基に変換可能なハロゲンをもつ高周期14族元素d-π電子系(Fc*-(X)E=E(X)-Fc*)を合成目標とした。E = Si, Geの系について検討を行った結果、特に、ゲルマニウムの系において、Fc*基を有する新規なクロロゲルミレノイド、Fc*GeCl2Liの合成・単離に成功した。このゲルミレノイドは、溶媒の極性や反応条件に応じて、ゲルミルアニオンおよび二価化学種クロロゲルミレンのそれぞれの性質を示す特異な化合物であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
かさ高いフェロセニル基(Fc*基)に対して、ジクロロゲルミレンジオキサン錯体を作用させたところ、期待したビスフェロセニルジクロロジゲルメン(Fc*(Cl)Ge=Ge(Cl)Fc*)ではなく、生成物からLiClが脱離していないクロロゲルミレノイドFc*GeCl2Liが単離された。ゲルミルアニオンとゲルミレンの両方の性質を併せ持つゲルミレノイドの単離例はこれまで皆無で有り、低配位ゲルマニウム化合物の性質解明の観点からも重要な結果が得られた。また、この特異な反応性を利用すれば、ゲルマニウム上に様々な官能基を有する低配位ゲルマニウム種へと誘導可能であることを予備的な結果として既に見出しており、多種多様なdーπ電子系構築という観点から優れた前駆体を合成出来たと言える。ここで得られた知見をもとに、次年度以降速やかに化合物合成および物性解明に着手することができると期待でき、予想以上の成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果により得られたクロロゲルミレノイド(Fc*GeCl2Li)を鍵前駆体とし、各種求電子試剤、求核試剤との反応により様々な官能基を有する含ゲルマニウムdーπ電子系化合物へと誘導する。また、本手法をケイ素またはスズの系へと展開し、様々な高周期14族元素π結合をπスペーサーとするdーπ電子系を構築する。 合成したdーπ電子系化合物群の各種スペクトル測定や電気化学測定により、その物性・機能を明確化し、元素特性と置換基効果を明確化する。
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Research Products
(8 results)