2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K13652
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属錯体格子 / 混合原子価低次元錯体 / 格子内電子移動 / マルチフェロイック / 電子ドナー・アクセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
当初ターゲットにしていた電子ドナー(D)とアクセプター(A)からなるDA一次元鎖化合物、[{Ru2(2-MeO-4-ClPhCO2)4}BTDA-TCNQ](benzene) (1; 2-MeO-4-ClPhCO2- = 2-methoxly-4-chlorobenzoate; BTDA-TCNQ = bis(1,2,5-thiadiazolo)tetracyanoquinodimethane)とその[Rh2]ドープ化合物(JACS 2013, 135, 17715-17718)について、単結晶における誘電測定を行ったところ、低温領域でも誘電異常が見られなかった。しかし、最近、誘電が協奏する物質の候補となる中性-イオン性転移DA一次元鎖化合物の第2例目を見出したので、詳細を検討した。この化合物は一段階で中性-イオン性転移を起こし、結晶溶媒を含みはするが、比較的安定な化合物である。その転移時における誘電応答とスピン配列の相互作用について期待できる。 また、スピンパイエルス転移に似たスピン二量化に伴う構造転移が観測される三次元骨格体を見出した。この化合物は、確かに、スピンの反強磁性カップリング時に誘電異常が観測される。今後、強磁場下での誘電応答の測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた候補化合物は、予想に反して誘電異常の応答が出なかった。これは、低温域でもホッピングによる電気伝導性が優勢であるか、もしくは、測定周波数よりも早い電子移動の為に、ドメイン内で双極子モーメントが止まらない為である。これらの結果は、ネガティブデータであったが、新しい候補化合物が2つ見出されたことにより、極めて面白い展開になりつつある。さらに、これらの化合物は、今までに全くない新しい系であるため、新たな物質系の提案に繋がる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の化合物のように、D2A化合物でも、電子移動の低下と共に構造の対称性が破れるものがある可能性があり、それらについて調査する。 II. H28年度以降の計画(二次元層状化合物、三次元ネットワーク化合物への展開) 二次元層状化合物、及び三次元ネットワーク化合物を産むD2A型で且つ一電子移動D2Aは、D0/D+の混合原子価状態を含んでおり、且つ全てTC, TN > 50 Kの長距離秩序型の磁石である。多くの場合、結晶化の段階で2つのユニット内Dは非対称性であり電荷は局在しているが、いくつかの化合物では、少なくとも100 Kでの構造では非局在の様相を呈しており、上記の一次元系の提案と類似の系として捉えることができる。そのため、低温では構造のゆらぎが止まり、電荷の秩序化(双極子の秩序化)が起こると考えられる。このような状況は、少なくとも過渡的にも誘電応答を与えるか、もしくは対称性の破れから強誘電性を持つ可能性があり、そのため、強磁性と強誘電性のマルチフェロイックを発現する可能性がある。
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Research Products
(23 results)