2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒドリドイオンを安定に内包する錯体骨格の合成と機能
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15K13657
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀毛 悟史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70552652)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒドリドイオン / 配位高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属イオンと架橋性配位子からなる配位高分子(Coordination Polymer、以後CPと呼ぶ)の結晶構造内部にヒドリドイオン(H-)を導入するために、前半では様々な金属水素化物と架橋性配位子の溶液系における反応を検討した。CPを構築する多くの遷移金属イオンではヒドリドイオンによって還元されてしまい、安定な結晶構造を得ることができなかった。その中でMg(BH4)2とトリエチレンジアミンをアセトニトリル中で反応させた生成物は高い結晶性を有するCPであり、また活性なBH4-イオンを内包していることがわかった。これらの同定は粉末X線回折、固体NMR、およびIR測定によって行った。BH4-イオンの活性については得られたCP粉末を空気中に晒すと速やかにCPが分解し、トリエチレンジアミンとBH4-の水素化錯体が生成したことによる。 本化合物の結晶構造を同定するため、放射光施設SPring-8の粉末X線解析を嫌気下で測定した。格子パラメータまで得ることに成功しているが、詳細な結晶構造の解明は現在引き続き検討中である。 本研究の結果は、いわゆる自己集合で合成されてきたCPの内部にヒドリドイオンあるいは水素ホウ素化イオンを導入できるということを示しており、これらの活性なイオンを用いた不均一還元触媒やアニオン伝導体としての合理的設計につながるものである。分子性ヒドリド錯体は数多く知られているが、結晶骨格材料に組み込んだ例は数少なく、ほぼ酸化物のみであった。本成果をきっかけとして、より多彩な金属イオンとの組み合わせやヒドリドイオンの活性、動的特性を制御してゆくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を開始するまで、金属イオンを架橋性配位子で連結した配位高分子(Coordination polymer、以後CPと呼ぶ)の分野において強い還元活性アニオンであるヒドリドイオン(H-)および関連する水素化物アニオン(例えばBH4-)を導入した例は1例しかなかった。またその例も合理的とは言いがたかった。CPは一般的に比較的温和な溶液反応で自己集合的に構築するものであり、このような活性アニオンを導入する手法はなかったが、本研究ではMg(BH4)2とジアミン型架橋性配位子を用い、金属と配位子の電位窓を調整することによってヒドリドイオン種を導入できることを証明した。その点、合成化学的に十分な進捗である。 またこれまで導入できた例は一例であるが、どのような金属塩や配位子を利用すればよいかその知見、また嫌気下合成反応の溶媒選定、反応温度選定含むノウハウを蓄積しており、次年度の合成目的に大きくつながるものである。 また解析においては放射光X線、固体NMR、IRの併用によってヒドリドイオンのCP中における状態や濃度が分かるようになっており、合成的にただ導入するだけではなく、CP中でどの程度の還元特性を保持しているか、評価できるようになった。この点も大きな進捗ポイントである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果を元に、より多彩なヒドリドイオン含有配位高分子(Coordination polymer、以後CP)の合成を進めてゆく。合成時に金属水素化物を用いる手法と同時に、CP結晶骨格を合成したのち、ヒドリドイオンを導入するポストシンセシス法をも適用する。例えばカルボン酸系配位子から合成されるCPは数多いが、高い温度でも安定なCPでは一部脱炭酸にともなうヒドリド生成が期待される。この機構をCP中で起こすことで、金属イオンに直接配位したヒドリドイオン含有CPを調整する。 また初年度ではヒドリド含有CPの合成には成功したが、詳細な結晶構造はまだわかっていない。この点を解明するため、一案としては重水素アニオン(D-)をH-に代わって導入したサンプルを調整し、中性子回折を用いることによって直接観察することを検討する。 以上のようにCPの合成方法の多様化、解析手法の展開を平行して進めることによって、高密度かつ高い活性を持つヒドリドイオン含有CPの合成スキームを確立する。
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Causes of Carryover |
研究成果を論文化する際に利用した英文校閲に係る費用が予定より小さくなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果を論文化する際に利用する英文校閲に係る費用に使用する計画である。
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Research Products
(7 results)