2015 Fiscal Year Research-status Report
走査トンネル顕微鏡による室温駆動原子価互変異性錯体超高密度単分子メモリの創製
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15K13658
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 大輔 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60589399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属錯体 / ナノ材料化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子価互変異性(VT)錯体の電子状態を、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて単一分子レベルで操作・評価し、室温で駆動する超高密度単分子メモリ素子を実現する。当年度は特に、以下の2つに関して研究を進めた。 1.超高真空STM測定を指向したVT錯体の選定と合成 本実験では、基板の作製から単分子膜の作製に至るまでを超高真空下で行う必要があるため、蒸着法により分子を昇華させることで単分子膜を作製する。本研究では真空蒸着可能なVT錯体として、コバルト―キノン―ビピリジン錯体を選定した。この分子は電気的に中性なので、高温で昇華性を示すことが期待される。当年度ではターゲット分子の合成に成功している。 2.室温大気下STM測定とVT錯体の設計 室温近辺でのSTM計測を行うには、分子が基板に強く固定される必要がある。高配向性グラファイト(HOPG)表面上に分子を固定するには、長鎖アルキル基を導入する手法が一般的である。本研究では、目的とするVT錯体と同様のビピリジン骨格を有し、室温で等方性液体相粘性を示す含長鎖金属錯体のHOPG上での配列構造を走査型トンネル顕微鏡により室温大気下で観察した。この測定から本錯体は広い範囲で非対称の明るいスポットが配列した、周期的なラメラ構造を持つ2次元結晶を形成していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度では、超高真空測定でターゲットとなるVT錯体の合成と、室温大気下で測定可能となる錯体補助配位子の選定に成功したため、最終年度で実際にSTMによる構造と電子状態の観測、変換を行う準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度に合成した分子を用いて超高真空STM測定を行い、電子状態の変換と評価を行う。また、室温大気下のSTM測定に関しては、当年度に選定した分子設計に基づき、ターゲット分子を選定して電子状態の評価と変換を併せて進める予定である。
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Causes of Carryover |
当年度の終盤では、予定以上に合成条件と測定条件の最適化が実現したため、当初予定していたほどの消耗品を試行錯誤のために使用する必要がなくなった。これにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該予算を合成試薬と合成器具に用いることで、より多種類の分子について特性評価を行うことが可能となるため、消耗品購入のための予算として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)