2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K13666
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中林 耕二 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80466797)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁性 / 分子認識 / ナノ空孔材料 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、機能性ゲスト分子を内包可能な巨大な空孔を有する強磁性体の構築を目的としている。初年度に、1 nm 径を超える巨大な空孔を有し、かつ強磁性を示すCo-W金属集合体の合成に成功しており、平成28年度は、その合成手法の改善および物性測定等を行った。 アセトン-水混合溶媒中で、塩化ルビジウム存在下、八配位金属酸イオンとコバルト2価イオンをゆっくり反応させると、一週間程度で茶色粉末と赤色板状結晶が析出するが、さらに2~3か月程度経過すると結晶生成が進み、赤色板状結晶が主な生成物となることが明らかになった。この赤色板状結晶は、微量のルビジウムイオンを含んでいるが、アセトン-水混合溶媒に数日浸し、洗浄することを2-3回繰り返すことで精製できることがわかった。以上の合成手法を用いることで、目的化合物の収率を55%と改善することに成功した。紫外可視吸収スペクトル測定では、配位子からタングステン5価イオンへの配位子-金属間電荷移動、コバルト2価イオンからタングステン5価イオンへの金属-金属間電荷移動およびコバルト2価イオンのd-d遷移が観測されたことから、本金属集合体に含まれるコバルトとタングステンの価数は、それぞれ2価と5価であることが明らかになった。また、本化合物の磁化の磁場依存性を測定したところ、保磁力5500 Oeを有していることが明らかになった。また、飽和磁化の値から、Co-W間には強磁性的相互作用が働き、Co(II)(S = 3/2)およびW(V)(S = 1/2)上の各スピンが平行に配列した強磁性相を有することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は、機能性ゲスト分子を内包可能な巨大な空孔を有する強磁性体の構築を目的としてとしており、平成27年度から平成28年度までに、その合成手法の確立、結晶構造の決定、磁気特性の評価を完了した。結晶構造解析、磁気測定の結果より、得られた化合物は1 nmを超える空孔を有する強磁性体であることが明らかになっており、当初の計画通りに研究計画が進んでいる。また、合成手法の改良により、収量を増やすことに成功しており、今後、ゲスト交換のスクリーニングを行うにあたって円滑に進められると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までに、1 nmを超える空孔を有する強磁性3次元金属集合体の合成手法を確立し、比較的高収率で目的化合物を得ることが可能となった。しかし、収量は上がったものの、目的化合物結晶を得るまでに2~3か月と長い期間を要するため、さらなる合成手法の改良が必要である。したがって、結晶化の際の反応溶液の拡散法、温度を制御し、より効率的な合成手法を探索する。また、細孔に含まれる溶媒によって磁気特性が変化する傾向があるため、機能性ゲスト分子の取り込みと共に溶媒交換による磁気特性変化を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の目的は概ね達成したが、より効率よく目的化合物を合成するための条件を検討し、追加実験を行う必要があり、また磁気データ解析をより詳細に行うため期間延長を申請した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
化合物合成に必要な試薬・器具や測定に必要な消耗品の購入を予定している。また、本研究課題で得られた成果を発表するための投稿費用や学会参加旅費を支出予定である。
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[Presentation] Two-dimensional octacyanidemetalate-based magnets2016
Author(s)
K. Nakabayashi, S. Chorazy, Y. Miyamoto, B. Sieklucka, S. Ohkoshi
Organizer
The 4th Awaji International Workshop on Electron Spin Science & Technology: Biological and Materials Science Oriented Applications(AWEST2016)
Place of Presentation
淡路夢舞台 (兵庫県淡路市)
Year and Date
2016-06-21
Int'l Joint Research / Invited
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