2015 Fiscal Year Research-status Report
紫外光励起に対して極限まで耐久性を持たせた青色発光分子の開発とその応用
Project/Area Number |
15K13667
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
井上 将彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60211752)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロタキサン / 光安定性 / シクロデキストリン / 一重項酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、電気・光・熱などに対する耐久性を極限まで向上させ、どのような条件下で もほとんど劣化しない有機発光分子を創出して、その材料・化学・生物分野への応用を企図する。 そこで、光に透明な環状分子で 1 個の発光分子を完全に包みこみ、発光分子の電子励起から生じ る副産物(活性酸素種など)の攻撃を防御できるロタキサン型発光分子を開発する。具体的には 以下の研究項目を実施する。
研究項目1:水や酸素存在下での電子励起にも劣化しない有機発光分子の開発と EL 特性評価 研究項目2:外部からの化学刺激により劣化しない有機光触媒およびバイオプローブの開発
今年度は、研究項目1の水や酸素存在下での電子励起にも劣化しない有機発光分子の開発を重点的に行った。特にアルキニルピレンを発光部位とし、シクロデキストリン(CD)で完全に分子被覆されたロタキサン型青色発光分子([3]ロタキサン)に焦点を絞り、それらを設計・合成した。 この[3]ロタキサンの構造は、X線結晶構造解析により確認した。発光分子が CD の防御壁に囲まれることで、活性酸素種が生成される紫外光励起下でも高い安定性を示すとともに、非常に高い発光量子収率(Φf = 0.75)を持つことが分かった。この特殊な分子構造は、高濃度溶液中や固体中でも発光分子どうしの相互作用を防ぐことが可能であり、 濃度消光により発光特性が喪失する有機発光分子の欠点を克服した。また、酸素存在下において [3]ロタキサンの光褪色実験および活性酸素捕捉実験を実施したところ、[3]ロタキサン自体は褪色しないものの、その周囲で一重項酸素酸素は発生していることも分かった。これは、[3]ロタキサン内部 の発光分子が CD を隔てて、酸素分子とエネルギー移動できることを意味している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルキニルピレンを発光部位とし、シクロデキストリン(CD)で完全に分子被覆されたロタキサン型青色発光分子([3]ロタキサン)に焦点を絞り、それらを設計・合成した。この [3]ロタキサン は、研究目的とした「電気・光・熱などに対する耐久性を極限まで向上させ、どのような条件下でもほとんど劣化しない有機発光分子を創出して、その材料・化学・生物分野への応用を企図する。」の材料として、非常に有望であることがわかった。この [3]ロタキサン の詳細な構造と光物性を調べて、Org. Lett. 誌に投稿し、掲載された(DOI: 10.1021/acs.orglett.6b00420)。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ロタキサン合成の収率向上:[3]ロタキサンの CD のヘッド部位に、ククルビットウリル(CBU)が隣接した[5]ロタキサンを設計・合成する。この [5]ロタキサンは、CBU の空孔がアミノ基を包摂する性質、および CBU と CD のヘッド部位が水素結合する性質を利用して、CBU が CD と隣接する ような分子構造を構築する。これにより、CBU が CD 空孔のヘッド部位を覆う形となり活性酸素種などの空孔内部への侵入をより防ぎ、かつ CBU が軸分子のアミノ基に固定されることでシャトリ ングを抑制できる。 さらに [5]ロタキサンは、パーツどうしが水素結合や配位結合して自発的に安定な擬ロタキサンを形成するため、[5]ロタキサンを良好な収率でワンポット合成できると予想される。 2)広範な波長領域に対応する改良型ロタキサン群の構築:昨年度で得られた知見を基に、発光部位、コーティング部位、 ストッパー部位を様々に組み合わせて改良型ロタキサンを合成する。各部位の組み合せは、分子モデリングソフトのシミュ レーションを基に決定する。発光部位には、種々のアルキニル発光 分子(アントラセン、ペリレンなど)を使用する。被覆する分子としては、各種 CD (α , β , γ) だけでなく CD で包摂できないサイズの発光分子も考慮し、ピラーアレーンなども選択肢に入れる。 3)ロタキサン型光触媒の開発:ロタキサン型発光分子が酸素にエネルギー移動できる特長を利用し、一重項酸素種を産出する光触媒を開発する。酸素と効率よくエネルギー移動するメチレンブルーなどを発光部位とした改良型ロタキサンを用いて、光反応量子収率から一重項酸素生成能力を評価する。
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Causes of Carryover |
端数
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品に使用予定
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Research Products
(4 results)