2016 Fiscal Year Research-status Report
光応答性電荷移動層を用いたフォトクロミックエレクトロニクス電子デバイス
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15K13669
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 建児 京都大学, 工学研究科, 教授 (80262145)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機エレクトロニクス / フォトクロミズム / 電界効果トランジスタ / 光スイッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機薄膜電界効果トランジスタの電荷移動層に、新しく分子設計した光応答性のフォトクロミックジアリールエテンを用い、電荷移動層の分子配列の最適化と界面の電荷注入効率の最適化により、飛躍的にフォトクロミックエレクトロニクス電子デバイスの機能向上を目指そうとするものである。平成28年度は新しく、ジベンゾチオフェンに加えてトリメチルシリルビフェニルを側鎖に持つジアリールエテンについて検討した。その結果、これまでの最大の光照射に伴うON/OFF比である1000倍には及ばないものの、100倍を超える光照射による変化を達成した。 今年度はそれに加えて、トランジスタ特性の光応答の報告の際に用いた光異性化分子の薄膜に極細の光を照射し、全体が絶縁体であった薄膜の一部を半導体にすることでトランジスタ回路を描画することに成功した。その結果、ワイヤ状の一次元トランジスタチャネルを並列接合する技術、あたかもバルブで開閉するかのように局所的な光照射で電流の流れをON-OFFする光バルブ機能、Y字構造をしたトランジスタチャネルなど、これまでにない新しい動作原理やデバイス構造を実現した。さらに、光を照射して絶縁体と半導体の性質を交互に変えることで、何度でも書き込みと消去を繰り返すことができるという要素技術をもとに、光強度を変えることで電流を段階的に制御できる加算回路の作製にも成功した。また、本内容は、京都大学、物質・材料研究機構を通じてプレスリリースを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フォトクロミック分子の側鎖を最適化することで、電荷移動層の分子配列の最適化と界面の電荷注入効率の最適化を行うという当初の計画は順調に進展しているが、配列を制御した薄膜結晶を自在に操るためには分子合成とデバイス評価のサイクルを数多く行う必要があり、まだ検討の余地がある。しかし今年度は、研究開始当初は想定していなかった、光によるデバイス表面への細線描画の研究が進展し、光でトランジスタ回路を描画することに成功し、プレスリリースを行った。おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
電荷移動層の分子配列の最適化と界面の電荷注入効率の最適化を行うという、本研究の当初の計画の意義はいまだにゆるぎない。配列を制御した薄膜結晶を自在に操るためには、分子合成とデバイス評価のサイクルを出来るだけ数多く行い、基礎的知見を積み上げる以外に近道はないと考えられるために、今後も分子合成とデバイス評価を中心に研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画は、有機薄膜電界効果トランジスタの電荷移動層に光応答性のフォトクロミック分子を用いフォトクロミックエレクトロニクス電子デバイスの機能向上を目指すものであるが、分子合成とデバイス評価のサイクルをさらに数回行いできるだけ良いものを作り出すことを目的として研究期間を延長することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した予算は、分子合成とデバイス評価のサイクルを数回行うための消耗品費としての使用を考えている。
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