2015 Fiscal Year Research-status Report
分子内電荷移動を基盤とする熱活性化遅延蛍光材料の創製
Project/Area Number |
15K13671
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 正毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (10272709)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遅延蛍光 / 発光材料 / 電荷移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規熱活性化遅延蛍光材料として2,5-ジアミノ-1,4-ビス(アロイル)ベンゼンを設計した。アミノ基がカルバゾリル基、アロイル基がベンゾイル基である誘導体は、X線結晶構造解析の結果からカルバゾリル基とベンゾイル基との立体反発により中央ベンゼン環に対してドナーであるカルバゾリル基とアクセプターであるベンゾイル基とがそれぞれ大きくねじれた構造をしていることがわかった。室温および窒素雰囲気下において2,5-ジアミノ-1,4-ビス(アロイル)ベンゼンは、溶媒トルエン中では中程度の発光量子収率で発光する一方、ポリスチレンフィルム中では発光量子収率0.39~0.66と効率よく発光した。そしてこれらの発光には通常の蛍光に加えて熱活性化遅延蛍光が含まれていることがわかった。77 Kにおける時間分解スペクトル測定により、2,5-ジアミノ-1,4-ビス(アロイル)ベンゼンの励起1重項と励起3重項状態のエネルギー差は、0.14 eV以下であることがわかった。この小さなエネルギーギャップは、分子がねじれた配座をとりHOMOとLUMOの重なりが小さいためであると考えられる。また、ドナーとアクセプターを一つずつもつ2-アミノベンゾフェノンも設計・合成した。室温窒素雰囲気下においては溶媒トルエン中、ポリスチレンフィルム中で熱活性化遅延蛍光を示すことがわかった。発光スペクトルは、対応する2,5-ジアミノ-1,4-ビス(アロイル)ベンゼンのそれらに比べて短波長していることがわかった。溶媒トルエン中やポリスチレンフィルム中の-アミノベンゾフェノンの発光量子収率は2,5-ジアミノ-1,4-ビス(アロイル)ベンゼンと比較すると低い値を示した。これらの結果から、熱活性化遅延蛍光の発光効率の向上には、隣接するドナーとアクセプターのペアが二つあることが重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2,5-ジアミノ-1,4-ビス(アロイル)ベンゼンが期待通り熱活性化遅延蛍光を効率よく発光する発光団であることを明らかにした。特に、アミノ基としてはカルバゾリル基が、アロイル基としては4-シアノフェニル基が好ましいことが実験的に明らかにされた。この結果は、理論計算によるシミュレーションからの支持されている。これらの成果が得られていることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
アミノ基とカルボニル基の数やコアへの導入位置が熱活性化遅延蛍光の発現に及ぼす影響を明らかにするために、2-アミノ-1,3-ジアロイルベンゼン、2,6-ジアミノアロイルベンゼンおよび4,6-ジアミノ-1,3-ビスアロイルベンゼンなどの合成と物性評価を進める。2-アミノ-1,3-ジアロイルベンゼンおよび2,6-ジアミノアロイルベンゼンは、アミノ基もしくはアロイル基の一方を他方二つで挟むことにより、その分子構造の対称性から挟まれた窒素のn軌道やカルボニル基のπ*軌道はコア平面上に配向することを想定していて、その空間配置と熱活性化遅延蛍光の関係を明らかにする。また4,6-ジアミノ-1,3-ビスアロイルベンゼンは対称面を有する構造である。両者を比較することにより分子構造の対称性が熱活性化遅延蛍光に及ぼす影響を調べ、熱活性化遅延蛍光の高効率化に相応しい対称要素を明らかにする。
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Research Products
(3 results)