2016 Fiscal Year Research-status Report
深部断層イメージングに向けた1000ナノメートルを超える硬X線発光ナノ材料の開発
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15K13672
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小阪田 泰子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00579245)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線化学 / ナノ材料 / シンチレータ / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、X線励起で1000 nmを超える近赤外領域に発光を示すナノ材料を用いた個体での断層発光イメージングの実現を目的とした。生体深部の構造や分子動態をリアルタイムで高解像度に計測することは難しい。発光トモグラフィーイメージングは、生物個体の内部構造を自在に可視化する技術要素として最も着目されている。しかしながら、真に生体の断層を発光によりイメージングする技術は、現在のところ、発展途上段階である。実際には、発光プローブ、計測装置の両面から、斬新な作用原理導入が必要である。 本年度は、計測装置のセットアップを行った。申請者の所属する大阪大学産業科学研究所では、量子ビーム科学研究施設内に実験用加速器LINACが稼働中である。本研究では、LINACのL-バンドからの20 MeV程度の電子線ビームでアルミやタングステン金属ターゲット存在下発生する制動放射光子を利用し、発光ナノ材料の開拓とそのイメージングへの応用を計画した。実際、電子線ポート前に、5 cmの厚さのアルミ板を設置し、電子線を照射することで、制動放射光子を発生させた。固体シンチレータ (ZnS:Cu)をアクリル板に塗布し、その発光をデジタルカメラを用いて計測した。その結果、発生した制動放射光子で発光が観察されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、生体深部でのイメージングを目的に研究を開始した。一方、イメージングに加え、このX線励起発光は、生じた発光を光源として、光線力学療法や化学療法へ応用することが可能と考えた。しかしながら、診断用X線 (約50 keV)と治療に用いる放射線 (2-10 MeV)は、エネルギーにして約40-100倍程度の差がある。よって、「光化学反応を用いた効果的な複合的治療法の開発」には、まず、放射線治療に用いる数MeV程度の制動放射光子に応答する発光ナノ材料自体の開拓調査が必要と考えた。そこで、上記の測定系を構築するため、産業科学研究所内に稼動しているLINACの利用を考え、測定方法の変更を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、発光性ナノ材料の医療応用、中でも可視光励起による細胞イメージングが数多く報告されているが、生体機能制御を達成した例は少ない。本研究では、制動放射光子励起による発光材料を用いた個体レベルでの治療法の開発を行う。治療用X線は生体深部まで到達が可能であり、がんなどの必要な場所で一酸化窒素などを発生させる”on-demand”な生体機能制御法、治療法の開発につながる。 複合化させる光機能分子として、波長488 nmの光照射で一酸化窒素 (NO)を発生するケージド化合物「NOBL-1」 (名古屋市立大学中川秀彦教授との共同研究)に加え、ポルフィリン類ソーレ帯の波長400 nm励起で1O2発生を引き起こす光増感剤、ソラレン等のDNA光クロスリンク剤を検討する。複合体で、まず可視光励起により、NO等の放出効率を最適化する。複合体の制動放射光子励起により、複合体からのNOの照射線量に対する発生効率を決定し、生体応用への知見を得る。発生効率計測には、近赤外発光 (1O2、 1270 nm)やNO蛍光プローブ、GC-MSなど従来の方法を用いる。
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Causes of Carryover |
引き続き、ナノ材料を合成し、構築したセットアップ系で測定を行う必要性が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ナノ材料の合成試薬、消耗品に使用する。
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