2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13677
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
舟橋 正浩 香川大学, 工学部, 教授 (90262287)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 液晶性半導体 / ドーピング / レドックス活性 / 導電性高分子 / オリゴシロキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
ドーピングした高導電性の有機高分子膜は電極材料、電極/有機半導体層間の電荷注入層として非常に有用である。PEDOT/PSSが現在導電性高分子薄膜として広範に用いられているが、π電子系の凝集構造が十分に制御されておらず、ホール輸送が効率的に進行しないため、導電率が十分に上がらない。本研究課題では、カチオンラジカルを安定に生成するオリゴ(エチレンジオキシチオフェン)部位に環状シロキサン側鎖を導入した液晶性化合物を合成する。液晶性を利用して、π電子共役系の凝集構造を制御し、ホール輸送効率を飛躍的に高める。合成した液晶材料をスピンコート法により薄膜化し、酸の蒸気にさらすことにより重合する。液晶相の分子配向構造を保持したまま重合するよう、重合条件の最適化を検討する。得られた薄膜の分子凝集構造と表面構造を解析する。さらに、薄膜の電気化学的ドーピングを行い、薄膜の電気伝導性を直流伝導度測定、および、交流インピーダンス法によって評価する。また、得られた薄膜の柔軟性を活用し、力学的な変形の導電性に及ぼす影響を検討する。液晶性とナノ相分離を活用して柔軟性を保持しつつも結晶的な分子凝集状態を実現する。また、電荷密度を電気化学的に制御し、高い導電率を示す液晶性高分子薄膜を作製する。 これまで、シクロテトラシロキサン部位を導入した3,4-エチレンジオキシチオフェンの三量体が室温でスメクティック相を示し、スピンコート法による薄膜化が可能であり、トリフルオロメタンスルホン酸蒸気に曝すことにより液晶相の構造を保持したまま重合することを見出した。また、その際にドーピングが進行し、導電率が8×10-7 S/cmに増大することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3,4-エチレンジオキシチオフェンの三量体にベンゼン環を介してアルケニル鎖を導入した化合物を合成したが、安定な液晶相を示さなかった。そこで、アルキル鎖末端にシクロテトラシロキサン環を導入した化合物を合成した。この化合物は202℃以下でスメクティック相を示し、室温でも液晶相を保持した。環状のシクロテトラシロキサン環のナノ相分離効果により、液晶相が安定化されているものと考えられる。この化合物はスピンコート法による薄膜作製が可能である。スピンコート法により作製した薄膜を80℃でトリフルオロメタンスルホン酸蒸気に曝すことにより開環重合が進行し、液晶相での分子配向状態を保持したまま、高分子ネットワークが形成され、不溶性の薄膜が得ることができた。重合の過程で、薄膜の色は黄色から濃青色に変化した。液晶性薄膜の重合の過程で、π電子共役系が酸化されカチオンラジカル、ジカチオンが生成したと考えられる。薄膜の重合過程で生じたカチオン種はホールとして作用するため、電気伝導性が大幅に向上した。導電率は、重合前の2.8×10-13 S/cmから8.6×10-7 S/cmに増大する。 一方、n-型特性を示す液晶性ペリレンテトラカルボン酸ビスイミド(PTCBI)誘導体のドーピングも検討した。シクロテトラシロキサン環とトリエチレンオキシド鎖を導入したPTCBI誘導体は室温でカラムナー相を示した。この化合物もスピンコートによる液晶性薄膜の作製が可能であり、酸蒸気に曝すことにより、液晶相の構造を保持したまま不溶性の重合薄膜を作製する事ができた。薄膜を亜ジチオン酸ナトリウム水溶液に浸す事により、ドーピングする事ができ、導電率はドーピング前の1×10-9 S/cmから1×10-5 S/cmに増大した。
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Strategy for Future Research Activity |
導電率向上のためにはπ電子共役系の延長が有効と考えられるので、3,4-エチレンジオキシチオフェンの4量体、6量体の合成を検討する。また、現段階では反応収率が低く、大量合成が困難であるので、効率的な合成方法も検討する。また、現在得られた薄膜は基板上から剥離して、自立膜として扱う事は出来ない。薄膜の柔軟性を確保するため、アルキルスペーサーを延長する。機械的な強度を高めるため、架橋も検討する。薄膜化や重合条件の最適化を進め、均一性の高い薄膜の作成を検討する。n-型特性を示す液晶性PTCBIについては、ドーピング状態が大気中で安定でないため、ペリレンコアに電子吸引性置換基の導入することにより、アニオンラジカルやジアニオンの安定化を検討する。薄膜の電気化学的ドーピングを行い、薄膜の電気伝導性を直流伝導度測定、および、交流インピーダンス法によって評価する。また、得られた薄膜の柔軟性を活用し、力学的な変形の導電性に及ぼす影響を検討する。スピンコート膜、および、重合薄膜の表面モルホロジーを原子間力顕微鏡にて解析する。 液晶材料の特徴の一つは、マクロに均一に配向した薄膜を作製できる事である。ネマティック相での分子配向制御は比較的容易であるが、高次のスメクティック相やカラムナー相の配向性制御は通常困難である。本研究課題では、フリクショントランスファー法を活用して、一軸配向した薄膜を作製し、導電率の異方性の評価を検討する。
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Causes of Carryover |
購入したスペクトロメーターシステムが当初予定した金額よりも安くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた余剰金は今年度使用する消耗品に充当する予定である。
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