2015 Fiscal Year Research-status Report
電極表面上の有機単分子膜を二次元伝搬する反応フロントの実時間追跡
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15K13680
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
相樂 隆正 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20192594)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機超薄膜 / 二次元伝搬現象 / 分光電気化学測定 / 実時間計測法 / 核生成成長過程 / フナシルビオロゲン / 電位計測微小電極列 |
Outline of Annual Research Achievements |
高配向グラファイト(HOPG)のベーサル面を電極とし、水溶液との界面で起こるビオロゲンの二次元一次ファラデー相転移における反応フロントの追跡を研究の対象とした。相転移フロントの伝搬を実時間で追跡するため、1 ms/sampleのサンプリング時間で追うことができ、かつ双安定領域が広いビオロゲンを実験的に探索した。HOPG表面にビオロゲン水溶液の滴を載せた三極系を構築し、ボルタンメトリ、電位ステップ、ダブル電位ステップ応答を精査した。その結果、両側鎖にカルボキシル基末端のC7アルキル鎖をもつビオロゲンが、相転移フロントを追うため最も適切な分子のひとつであることを確認できた。 HOPG/ビオロゲン水溶液界面における1地点に電流パルスを与えて核を生成し、核成長過程におけるフロントの伝搬を、多数の位置での電位変化を検出することで追跡するため、電位計測微小電極列+パルス電極からなるマルチ電極アレーを用いる実験の準備を進めた。 蛍光を用いる相転移フロント伝搬の追跡のため、ビオロゲンと色素を連結した分子を用いる方法を立案した。その準備のためのプロトタイプ分子として、芳香族部位を、カルボニル基を途中にもつ連結方式でつないだ分子、すなわちフナシルビオロゲンを合成した。この分子は、中性~アルカリ性領域での電子構造の特異性により、酸化型のビオロゲンが強い可視域の光吸収と鮮やかな蛍光を示すことが明らかになった。しかし、狙いとした一次相転移を示さなかったため、本研究の主眼と分岐する課題ではあるが、電子状態と分光電気化学的挙動の関係を明らかにするのに格好の系であることが確かめられた。 相転移の広域化と低速化のために、水に不溶でヘッドグループにビオロゲンを持つ界面活性剤分子を合成し、その挙動をAu(111)電極で検討した結果、相転移は一次でない上、共存アニオンにきわめて敏感であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電位検出電極を並べて電位変化を追うために用いる電極列として、脳外科測定で用いられる多電極センサーを流用するという発想が具体化し、二年目の当初に実際を試すことができる段階まで進展した。これは、個別のキャピラリで構成した電極列を用いる当初の計画段階では思いもよらなかった斬新な手法である。一方で、レーザー光の二光路照射系については、基本設計の立案までは予定通りにできたものの、実際の構築が遅れている。蛍光性ビオロゲンを用いる試みは、合成を試行したフナシルビオロゲンの分子が意外な性質を示したため、その究明に一時的に重点を置いた(論文投稿準備中)ため、実際の測定が二年目になる。このフナシルビオロゲンの挙動の検討は、予期しなかった新しい展開である。 さらには、ビオロゲンを組み込んだ水に不溶な界面活性剤をあらかじめ電極上に配置し、相転移を起こさせることに挑戦した結果、この検討でも意外な新しい挙動が得られた。特に、ハロゲンイオンの濃度に敏感に依存した挙動が明らかになったことである。ただし、一次相転移挙動ではなかったため、さらに分子設計を見直す必要性が明らかになった。 以上の状況を総合し、おおむね順調な進捗であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー光を二光路に分けてHPOG表面上の二点に照射し、相転移フロント伝搬を待ち構えて反射光の変化を測定するための光学系を組み立てる。また、相転移に伴い蛍光バンドが大きく変化する色素を見出し、ビオロゲンと混合するか、結合させる。 以上の新たな準備を早期に実現した上で、以下のように研究を推進する。 (1) 電流パルス応答を多点電位モニターすることにより、相転移フロントを追跡する。 (2) 二光路実験を成功させ、フロント伝搬方向を統計的に見出し、伝搬速度を把握する。 (3) 蛍光が相転移フロントで変化する様子を蛍光顕微ビデオ測定で捕らえる。 (4) 上記(1)~(3)の方法で得た結果を相互比較し、相転移の動きを解析する。さらには、ビオロゲンをヘッドグループに持つ界面活性剤分子から成る単分子吸着層でも、相転移を起こさせることを狙う。
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Causes of Carryover |
旅費及び共同機器使用料を本科研費から支出する必要がなくなったため、その予定分を物品購入に投入した。しかし、消耗品の値下がりや、パルスポテンシオスタットの納入が当初納期よりやや遅れたので、それを使うための消耗品購入を2年次目とすることとしたため、若干の残高が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、パルスポテンシオスタットを適切に用いるための消耗品購入等に充当する計画である。
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Remarks |
随時、研究室HPに掲載する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Electrochemistry of Viologens: New Perspectives2016
Author(s)
Takamasa Sagara、Hironobu Tahara, Tomohiro Higashi, Daiki Kubota, Masaki Toyohara, Bo Wang
Organizer
The XIVth International Conference on Electrified Interfaces
Place of Presentation
Changi Cove (Singapore)
Year and Date
2016-07-03 – 2016-07-08
Int'l Joint Research
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