2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13682
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
田島 裕之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (60207032)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機薄膜デバイス / 有機スピントロニクス / 電荷注入障壁 / 蓄積電荷測定法 / 光CELIV法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、遅延時間を用いた磁場効果増強法により、弱磁場下で100%以上に及ぶ磁場効果を示す、接合デバイスを探索・作成することを目指している。今年度は当初予定では最終年度であったことから、導電性高分子・C60誘導体(P3HT:PCBM)からなる混合物に関する、磁場効果の遅延時間依存性に関する実験結果をまとめて、Dalton transaction誌で公表した。研究計画では、磁場効果は遅延時間が増すと増加するであろうと想定されたが、これは低温強磁場中のみで観測される現象で、弱磁場における磁場効果は、遅延時間を増すといったん増加するものの、更に増すと減少することがわかった。これにより、当初予定した実験手法では、申請書に記載した研究目的を達成できないことが明らかになった。そこで、方針を転換し、界面の特性を利用した磁場効果を観測するための新規実験手法の開拓を現在行っている。 その中で特に有力な実験手法は、蓄積電荷測定法と命名した実験手法である。この実験手法は変位電流法の応用であり、蓄積電荷の印加電圧依存性を正確に求め、それから電荷注入障壁測定法を決定することができる。この実験手法は当初フタロシアニンに対して適用され、その後、ペンタセン、導電性高分子等にも適用された。有機半導体においては、電荷注入障壁の直接測定法が知られていないことから、この実験手法は今後さまざまな場面で応用されていくことと考えている。関連する報文は、Organic Electronics誌およびJournal of Physical Chemistry C誌で公表している。また現在、関連する研究成果も取りまとめ中である。この実験手法は、磁場効果の観測以外に種々の目的で利用可能と思われ、さまざまな観点から実験手法の精度を向上させる努力を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「弱磁場領域で非常に大きな磁場効果を示す物質系を探索する」、という当初の目的は達成できていないが、代わりに、有機半導体/金属界面における、電荷注入障壁を直接決定する実験手法(=蓄積電荷測定法)の開発に成功した。有機半導体デバイスにおける、電荷注入障壁の直接決定法はこれまで知られていなかったことから、この開発は基礎・応用の両面で価値のあるものと考える。ちなみに、この実験手法は電気測定により界面の情報を得る実験手法であり、申請者は近い将来において、磁場効果の実験に利用することも考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
蓄積電荷測定法は、原理的には電子、正孔両方に関する電荷注入障壁を正確に求められる実験方法と考えている。しかしながら、現実には電荷注入障壁が非常に大きくなると求められなくなる問題があり、現在この点を改善すべく素子構造の改良、光照射の併用などを行っている。
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Causes of Carryover |
本研究計画に関連する主論文は既に公表済みであるが、関連した実験である蓄積電荷測定法に関しては、現在データを取りまとめている段階である。このため追加の実験(再現性のテスト)や学会参加、論文投稿など数ヶ月等の延長が必要である。この点に関して研究期間延長を申し込んだところ承認された。 29年度に使用額が生じた最大の理由は、この延長期間における研究遂行のための予算が、本研究費を除けば存在しないためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文校正費、物品費(薬品等)、学会参加費、旅費等で使用する。
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Research Products
(9 results)