2015 Fiscal Year Research-status Report
新型窒素ラジカル前駆体及び光触媒的アミノ化反応の開発
Project/Area Number |
15K13689
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小池 隆司 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (30451991)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光触媒 / アミノ化 / 窒素ラジカル / ラジカル反応 / 太陽光 / 可視光 / アミノアルコール / イミダゾリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フォトレドックス触媒作用として一般に認知されるようになってきた可視光を駆動力とする一電子移動反応を基盤とした窒素中心ラジカル種の効率的発生と、そのラジカル反応への利用を目的に進めている。アミノ基は、医農薬品や機能性材料において重要な官能基であるが、ラジカル的アミノ化反応は非常に限られている。平成27年度はまず、入手容易かつ高活性な新型窒素ラジカル前駆体の開発に取り組み、1-アミノピリジニウム塩誘導体がフォトレドックス触媒作用によって効率的に窒素中心ラジカルを発生できることを見出した。また、水存在下にオレフィン類に対して本光触媒系を適用すると位置特異的アミノヒドロキシル化反応が進行することもわかった。本反応はピリジル基やボロン酸エステル基、保護されたアミノ基、エステル基やアセタール基などを有するオレフィンに有効で高い官能基許容性を示すことも特徴である。本反応で得られる1,2-アミノアルコール骨格は、生物活性天然物などに見られる医農薬品として有用な分子骨格である。また、アセトニトリル溶媒中で本反応を行うと、環化をともなったジアミノ化が進行し、イミダゾリン誘導体が得られることもわかった。得られた成果の一部は、学術誌(Chemistry -A European Journal)、国際学会(PACIFICHEM2015)、国内学会(日本化学会 第95春季年会、第108回有機合成シンポジウム)などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はまず新型窒素ラジカル前駆体の開発をめざした。研究を進める中で、1-アミノピリジニウム塩誘導体から光触媒的に対応する窒素ラジカル種が発生できることがわかった。また、窒素上の置換基によって反応性が大きく異なることも見出し、p-トルエンスルホニル基を有するものがもっとも効率よく反応することがわかった。一方で、オレフィン類以外への窒素中心ラジカルの付加は難しく、付加反応よりも水素原子引き抜き反応が起こることが分かってきた。今後は、この水素引き抜き反応を有用な分子変換反応に展開する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究から、窒素中心ラジカルの反応性は窒素原子上の置換基の影響を大きく受けることが示唆された。有用なラジカル的アミノ化反応を開発するために、窒素中心ラジカルの反応性をチューニングする手法は重要である。予備的実験で1-アミノピリジニウム塩の合成中間体である1-イミノピリジニウムイリドにルイス酸を作用すると対応する窒素中心ラジカルの発生が可能になることがわかった。この知見は、キラルルイス酸を用いればラジカル的不斉アミノ化に展開できる可能性がある。平成28年度は窒素中心ラジカルの反応性の制御を検討し、新しいアミノ化反応の開発に挑戦する。
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Causes of Carryover |
本研究で必要不可欠な可視光照射装置のランプ(一台10万円程度)の故障・交換が平成27年度はほとんどなく、実験消耗品費が当初計画したものよりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で使用頻度の非常に高い実験装置である可視光照射装置のランプの修理、交換費、または、平成28年度にとくに注力するラジカル的不斉アミノ化反応の試薬購入費として使用する計画である。
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