2016 Fiscal Year Research-status Report
面不斉分子をキラルプラットホームとする分子ラチェット構造の構築と動的異方性制御
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15K13690
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大森 建 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50282819)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シクロファン / ポリフェニレン / 面不斉 / 軸不斉 / ヘリシティー / ラチェット型分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光学活性な面不斉シクロファン誘導体の合成と、その官能基化さらにはそれらをモジュールとしたラチェット機構を有する分子ローターの開発研究を行うことを目的とする。本研究に用いるキラルシクロファン単位の合成は、独自に開発したジビニルベンゼン誘導体の閉環メタセシス反応を用いる方法により行った。本手法では、側鎖部に導入した光学活性なスルフィニル基とフェノールとの間に水素結合を形成させ側鎖の配座を固定することにより、環化生成物の面不斉を制御することが可能瀬ある。昨年度の検討において無置換のフェニレン基をスペ-サーとして導入した直鎖型のヘプタフェニレン誘導体の合成に成功したが、その合成効率は良いとは言い難かった。そこで、本年度ではまずその効率を上げるための検討を行った。その結果、側鎖単位の合成についてHornerーEmmons反応を利用した格段に効率に優れた合成経路を見出すことができた。まだ、スペーサーユニット(フェニレン基)とのカップリング反応についても部分的に保護されたジボロン酸誘導体を用いることにより、合成効率を高めることに成功した。 なお、本年度の検討においては、直鎖型ではなく折れ曲がり型の構造を持つポリフェニレン誘導体の合成も検討した。その結果、メタ置換のフェニレン基をスペーサーとして用いることにより目的とするヘプタフェニレン誘導体(折れ曲がり型)の合成に成功した。そして本化合物のECDを測定したところ、直鎖型化合物と同様に強いコットン効果を示すことが明らかになったことから、フェニレン主鎖が一定の方向へ規則的にねじれていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シクロファン単位の合成、およびその高次構造化についてその効率を大幅に向上させることに成功した。また合成した化合物、特にポリフェニレン誘導体については、特異な立体化学的特性(ヘリシティー)を有することを明らかにすることができた。一方、これらの研究成果によりラチェット機構を有する構造の構築に向けた基礎技術が整いつつあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討においては、これまでの研究にて得られた知見を基に、より高度な配座制御が可能なシクロファン誘導体の合成に取り組む予定である。具体的には、ナフタレンやアントラセン単位を有する化合物を設計/合成し、その立体化学的な性質や分子の動的挙動について詳細に調べる予定である。
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Causes of Carryover |
二年間の研究期間において一定の成果が得られ、現在論文の作成準備を進めているが、その取りまとめに追加実験と合成化合物の詳細な分光データの測定・解析が必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に有機合成実験に必要な試薬や溶媒等の消耗品の購入費に使用する。また、合成化合物の分光分析(NMR, 円二色性スペクトル等)に関連する諸費用や、論文投稿料にも一部使用する予定である。
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