2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13699
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
柳 日馨 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80210821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 高英 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60332962)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遷移金属触媒 / C-C結合開裂 / 水素化 / メタン / 減炭反応 / イリジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
有機合成化学の進展とともに様々な炭素ー炭素結合形成反応が開発されているが、既存の炭素ー炭素結合の開裂反応は、基質や官能基における制約性が大きい。均一系触媒反応による例は高歪み化合物に限定されている。本挑戦的萌芽研究では歪みのない炭素ー炭素結合の水素化開裂反応の基礎検討を行うことにより有機合成に利用可能な「有機分子トリミング法」の本格的研究始動への跳躍台とする。 ノナデカンの水素化分解をモデルとして取り上げ、各種遷移金属触媒をスクリーニングを行った。その結果、イリジウム触媒を使用した場合に、250°付近で炭素ー炭素結合の還元的な開裂が起こり、低級炭化水素が得られることを見出した。条件を変え、さらに検討を行ったところ、長時間の反応ではメタンを中心とした低分子が多く得られた。続いて分岐アルカンについても検討した。2-メチルペンタンとの反応や2,2-ジメチルペンタンとの反応においてもメタンが効率良く生成することがわかった。その結果、開裂は末端から起こっていることが示唆された。つづいて触媒活性を上げるために、金属酸化物への担持を期待し、これらを加えた反応系を検討した。その結果、アルミナを加えた場合に反応効率の大幅な改善が見られた。例えば、アルミナが共存する系でイリジウム触媒を用いて検討を行ったところ、 反応が完結し、メタンが 高い収率で得られた。 本手法により、比較的、簡単な反応操作で、多様な構造のアルカンをメタンへと水素化分解することが可能となると考えられるが、次年度は反応条件を水素添加量とともに精密チューニングすることで、制御された減炭素法の実現に向けた検討を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、アルカンの水素化分解を目的として、各種遷移金属触媒のスクリーニングを行った結果、目的の反応達成にイリジウム触媒が極めて有効であるとの知見を得ることができたことは本研究の方向性を示すものとなっている。現状では、すなわち、常圧の水素ガス雰囲気下で250℃付近の加熱条件で、アルカンの水素化分解が進行し、メタンへの変換を達成できた。また、直鎖状のみならず分岐アルカンにおいても水素化分解反応が進行することを確認した。さらにアルミナを共存させた系では、反応効率の大幅な改善にも成功した。さらに回収触媒の再利用も一部検討を行ったが、有望な結果が得られている。したがって、このように初年度において研究は順調に推移しており、次年度の飛躍のための基盤が構築されたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果をもとに、水素の使用当量数と水素圧力による選択性について詳細に検討する。逐次的炭素ー炭素結合開裂反応の触媒と条件を定め、エチルシクロドデカンをモデルとしてエチル側鎖の逐次開裂を検討し、分子トリミング法としての可能性を探求する。さらに芳香族アルキル化合物に対する炭素ー炭素結合開裂を検討する。この場合、芳香族の水素化が優先する触媒条件を排してアルキル鎖の分子トリミングが進行する可能性を探るものとしたい。さらにエーテル型の基質においてO-C結合の還元的開裂が起こるかどうかを調べる。 本年度後半には工業的応用に意義があると考えられる二つの側面についても検討を行う。ひとつは、油脂のアルキル鎖の触媒的分解であり、またもう一つはリグニンの水素化分解である。リグニンは芳香族化合物から成る未利用な触媒性バイオマスの代表として知られるが、その分解法による芳香族の有用化合物を得る方法の開発が求められており、本研究では触媒的水素化分解によりリグニンの水素化分解挙動を確かめる。 また今年度においては触媒のTONおよびTOFについても検討を加える。継続して逐次型減炭素反応の検討を中心にするが、ランダム型変換を起こす触媒系が発見された場合には新たな協力者を追加投入するなど臨機応変な対応をしたい。
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