2015 Fiscal Year Research-status Report
低流動温度および低粘性を示すPOSSイオン液体の創製と高耐熱性イオン伝導体の開発
Project/Area Number |
15K13711
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
金子 芳郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80404474)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シルセスキオキサン / イオン液体 / POSS / 超強酸 / 環状シロキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
シロキサン(Si-O-Si)結合等の無機成分を含むイオン液体は、耐熱性や難燃性の向上が予想され、より安全な電解質やグリーンソルベント等への利用が期待される。 本研究では、かご型オリゴシルセスキオキサン(POSS)構造を含む室温イオン液体の創製を目的に検討を行った。POSSは本来結晶性の高い化合物であるため高い融点(Tm)を有する。そこで、POSSの結晶性を低下させTmを消失させてPOSSイオン液体の流動温度を低下させるために、イオン液体としてよく知られる2種の置換基(四級アンモニウム塩およびイミダゾリウム塩構造の置換基)が側鎖にランダムに配置されたPOSSの合成を検討した。四級アンモニウム塩含有トリアルコキシシランととイミダゾリウム塩含有トリアルコキシシランからなる混合物の超強酸(HNTf2)を触媒に用いた加水分解/縮合反応を水/メタノール混合溶媒中で行ったところ、2種の側鎖置換基を有するPOSSが簡便に得られることを見出した。DSC測定より、約13℃にガラス転移点(Tg)由来の吸熱ピークが観測され、Tm由来のピークは観測されなかった。また、約25℃でわずかに流動し30℃以上で明らかに流動性を示すことを目視で確認し、室温イオン液体であることがわかった。 一方で、POSSと同じくシロキサン結合を骨格にもつ化合物である環状シロキサン構造を有する室温イオン液体の合成についても検討した。HNTf2の水/メタノール混合溶液中でイミダゾリウム塩含有ジアルコキシシランの加水分解/縮合反応を行ったところ、4-5量体の環状シロキサン混合物が得られた。この生成物のDSC測定より、37℃付近にTg由来の吸熱ピークが観測され、Tm由来のピークは観測されず、目視観察により0℃付近で流動性を示し、室温イオン液体の性質を示す環状シロキサンであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、室温付近で流動性を示すPOSSイオン液体の合成を達成しており、さらに熱分解温度(Td5)が400℃を越える高い熱安定性を有するイオン液体であることも確認されたため。また、環状シロキサン構造を有する室温イオン液体の合成も行っており、この化合物も室温で流動しTd5が400℃を越える高い熱安定性を示したことから、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、より熱安定性に優れるイミダゾリウム塩のみを側鎖に有し、室温付近で流動性を示すPOSSイオン液体の合成を目的に、種々のイミダゾリウム塩含有有機トリアルコキシシランのHNTf2を触媒に用いた加水分解/縮合反応を検討する。さらに、双性イオン型のシルセスキオキサン構造をもつイオン液体の合成も検討する。従来のシルセスキオキサン構造を含むイオン液体は、低分子量の対イオンが存在しているが、双性イオン型のシルセスキオキサンにすることで低分子量の対イオンが存在しなくなり、より熱安定性に優れるイオン液体になると予想される。
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