2015 Fiscal Year Research-status Report
界面レーザー捕捉により誘起される液液相分離を利用したタンパク結晶化の顕微計測
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15K13715
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 篤志 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90379553)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーザー捕捉 / 結晶化 / タンパク質 / 顕微ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、光の放射圧と微小物体との相互作用に基づくレーザー捕捉を用い、生体高分子であるタンパク質の新規結晶化法の検討を行ってきた。液液相分離・液滴形成を起こし得ないタンパク質溶液の気液界面へのレーザー集光・捕捉により、集合体・液滴形成が誘起されること、さらに液滴形成を経た溶液では結晶化が促進されることを見いだしている。本研究においては、界面レーザー捕捉下における集合体形成過程から液滴形成・消失に至る過程を顕微ラマン分光により測定し、レーザー捕捉により誘起される結晶化の機構を検討した。レーザー照射開始から集合体・液滴形成・液滴消失・結晶化までのタンパク濃度をin-situ測定可能なレーザー捕捉・共焦点顕微ラマン分光システムを構築した。本システムを用いた捕捉レーザー照射下のラマン散乱強度変化の測定より、集合体では結晶中と同程度の分子密度まで濃度が増加していること、レーザー照射停止直後から形成される液滴では液液相分離が可能なほどの高濃度であること、さらにその後緩やかに濃度は減少し、結晶化に至ることを明らかにした。また、集光点近傍での共焦点ラマン測定より、集光点のみならず数10マイクロメートルの広い領域で濃度上昇が誘起されることを明らかにした。集光点位置の集合体・液滴形成に及ぼす影響の検討より、効率的な液滴形成には気液界面へのレーザー集光が必要であることも明らかとなった。これらの結果より、界面レーザー捕捉では溶液中のタンパク質分子に及ぼされる放射圧と気液界面での分子吸着が協働的に作用することによりタンパク分子クラスター形成・成長が促進され、捕捉効率の非線形的向上により極めて高濃度な局所領域が形成され結晶化に至っていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度検討予定であった、レーザー捕捉・共焦点顕微ラマン分光計測システムの構築とこれを用いた放射圧下の濃度変化の検討、ならびに気液界面の寄与の検討より、放射圧と界面吸着を協働的に作用させることによりタンパク質の結晶化を誘起できることを明らかにした。これらの知見は、今後様々なタンパク質での結晶化の検討を行う上で重要な指針となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、様々なタンパク質を用いて界面レーザー捕捉による結晶化を行うとともに、レーザー照射下でのリアルタイムな結晶化の検討を行う。
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Research Products
(5 results)