2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ電解セルの創出による電解反応機構解明とデバイス応用
Project/Area Number |
15K13717
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤田 淳一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10361320)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電解液 / 局在電荷分布 / 可視化 / 酸化還元反応 / 触媒 / 担持体 / 透過電子顕微鏡 / 電子線偏向 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、透過電子顕微鏡視野下で機能する極薄のマイクロ電解セルを開発し、既開発の局在場可視化技術と組み合わせて、電解液中での炭素系電極の構造変化や局在電荷分布をナノスケールで可視化解析する技術の創出を目的としている。電解液中でのグラファイト担持体の熱拡散過程、グラフェン表面の破断とカーリング、さらにエッジ端の再結合過程を調べ、電解液中における担持体の劣化過程を解明して、高機能耐久性電池電極構形成に向けた開発指針を得るとともに、電解液中での担持体や触媒微粒子上での動的な局在電荷形成・電位分布を可視化計測し、局在電荷に強く依存する酸化還元反触媒応表機構を解明する計画である。 本研究を遂行するためには、透過走査電子顕微鏡を用いた局在場検出技術の開発と、電解液を電子顕微鏡中に保持しながらら電解電位印加を行うためのマイクロ電解セルの開発が重要な開発項目である。しかしながらH27年度の初年度から、SiNメンブレンへの金属電極の加工ならびに、電子線照射下での真空鏡筒カラム内でのセルの安定性、つまり水の漏洩や、電子線照射に伴うメンブレン歪みと破裂など、その安定性の確保に多くの課題が見出された。 本萌芽研究では200keV電子顕微鏡を走査型に改造し、透過力の強い200keV電子線によるSiNメンブレン電解セルの透過と、HARDF検出器による局在場検出技術への方針変更を行った。HARDF検出中心に対して電子ビーム軸にオフセットを与え、投影レンズ系を調整することで、局在場による散乱電子情報を画像化することができる事を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イミダゾリウム系イオン液体が高真空環境で安定に液状を保ち、走査透過電子顕微鏡の鏡筒内で電解液として利用できる事は判明した。しかし、有機高分子であるがために、電子線照射による重合反応が起こる。しかも、細く絞ったSTEM電子線、つまり非常に高い電子線ドーズに晒されることで、イオン液体の重合反応が極めて速く進行してしまうことも判明した。一方で水溶液ベースの電解液を用いた場合には、水のリークと、局所的な電解液変性に伴うメンブレン膜の膨張が生じ、メンブレン膜が破裂する。この事象が多発して問題となり、電子顕微鏡鏡筒内での電解液の保持に苦労している。SiNメンブレンの厚さは100nmであり、表面にpt電極を配置してある。このメンブレン膜2枚を重ね合わせて、電解液をメンブレン間の隙間に浸透させ、メンブレン基板周囲をエポキシ樹脂で張り合わせる構造を用いている。実効的な電解液の厚さは約1ミクロンであるが、この中でのガスの発生と局所的なメンブレンの歪みをどう解消するか、様々な方面から検討を進めている。 一方で、200keV電子線を用いた、HARDF検出器による局在場検出系はほぼ完成している。また200keV電子線による張り合わせメンブレンの透過像と電解液の無い状態での突起物周囲でに形成される局在場による電子線散乱可視化も実現している。固体材料や真空雰囲気に対して、流動性の液体を用いる事の難しさが如実に現れている。
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Strategy for Future Research Activity |
電解液中での局在場形成を直接観測することが、本研究の主たるテーマである。しかしながら、実際に液体を極薄のメンブレンの隙間に保持しながら局在場を観測することが想像以上に極めて難しいことが判明してきた。その最大の問題点は、電解液中での電解反応を観測しようとするために、メンブレン上に電極が形成されていること、つまり、外部に電極端子を取り出すための僅かな電極の厚みかの水がリークと、メンブレンの歪みを生じて問題となっている。この点を鑑み、本年度は、200keVのSTEMとHARDF検出法を用いながら次の3つの方向で研究を進めていく。 (1)本来の想定手法を踏襲し、電極構造や封止構造を改良し、外部からの電解液中への電位印加と、局在場の可視化を進めていく。 (2)外部からの電位を印加しなくても、電解液中の電極材料は照射電子線衝撃による電極材料の変性、さらには局部帯電を起こす。少々パッシブな方法になるが、外部からの電位制御無しの完全封止型電解セルは比較的安定であり、セル内部の電極の変性過程、局在電場状況は観察可能であると想定される。この一次電子線照射による自己帯電と電子線衝撃による電極構造変化過程観測と局在場変動の可視化は可能であると考えている。 (3)さらに、(1)と(2)に平行して、本研究提案に当初から示していた有機太陽電池のバルクpn接合の解析を実施する。有機太陽電池をFIBで切り出し、その薄片断面への光照射とその時にバルク接合界面での局在電場分布が観測できると想定される。
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