2015 Fiscal Year Research-status Report
メソ空間を検出に用いる超高感度核磁気共鳴センシングシステムの開発
Project/Area Number |
15K13737
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 洋 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80579269)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴 / 核偏極 / 分子プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生物個体における生体分子の機能・活性を分子レベルで明らかにするために、生体における化学反応を解析可能な高感度核磁気共鳴検出システムを開発することである。本研究では、生体深部での解析に優れた核磁気共鳴技術と、その感度を数万倍向上可能な核偏極技術、さらにメソ空孔を利用した汎用的な分子センシングプラット フォームを用いる事で、生物個体での応用を指向した高感度化核磁気共鳴技術による生体分子解析法の確立を目指している。具体的には、メソ細孔を有するメソポーラスシリカなどの細孔に、環境応答性を持たせた超偏極シグナル分子を入れ込み、外部刺激に応じて内部のシグナル分子を放出するシステムを目指した。 個体応用可能な生体分子検出システムの実現に向け、初年度は、細孔等の空間を利用したセンシングシステムを開発する上で重要な環境応答性のシグナル分子を探索・合成・評価した。これは、環境(メソ空孔の出入り相当)に応答して13C, 15Nの化学シフトが変化する分子である。当初、核偏極状態の寿命が長い15Nトリメチルフェニルアンモニウム構造を元に検討を進めていたが、化学シフト変化が目指している変化幅に達するものができなかった。次に、アミノ酸誘導体やニトロ化合物誘導体を検討したところ、いくつかの誘導体において、化学シフト変化が期待できるものが見つかった。pHやイオンに応答して、化学シフト変化が起こるため、空孔内に閉じ込められた状態と放出された状態とで化学シフト変化が起こる事が期待できる。今後、更なる探索・分子構造の最適化を行い、生体分子検出システムの実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、細孔等の空間を利用したセンシングシステムを開発する上で重要な環境応答性のシグナル分子を探索・合成・評価した。これは、環境(メソ空孔の出入り相当)に応答して13C, 15Nの化学シフトが変化する分子である。当初、核偏極状態の寿命が長い15Nトリメチルフェニルアンモニウム構造を元に検討を進めていたが、化学シフト変化が目指している変化幅に達するものが得られなかった。そのため、分子の探索にやや時間を要してしまった。現在は、その他の誘導体において候補分子が見つかっており、今後それを元に検討を続けていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、候補として得られてきた環境応答性シグナル分子を、メソ細孔内に内包する手法を検討する。環境応答性の超偏極シグナル分子の内包は、分子の電荷や弱い相互作用(水素結合、疎水性相互作用)を利用できるのではないかと考えている。内包した超偏極シグナル分子の放出を検出に利用するシステムの開発を図る。 その後、超偏極高感度化の実証実験を行う。偏極法としては、動的核偏極法かパラ水素誘起偏極法のうち最適なものを選択する。超偏極検出に成功しだい、実際の生物サンプルを用いた実証実験に移る。
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