2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13743
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤枝 伸宇 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00452318)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 翻訳後化学修飾 / ラジカル酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、従来の翻訳後修飾とは全く異なる特殊な化学修飾が施されたアミノ酸側鎖の架橋構造や補因子(Cross-linked Protein-derived Cofactors (CPDC))が種々のタンパク質内で発見されてきた。本研究では、申請者らが培ってきた金属-活性酸素種による酸化的自己修飾の手法を発展させ、小型タンパク質の内部で、自発的に形成される新奇なCPDCを持った機能性タンパク質、特に人工ラジカル金属酵素の創製を行った。生起させたCPDC近傍微小環境の制御に加え、金属配位構造の最適化により、安定なラジカルを保持可能な酸化還元補酵素として昇華させることでCPDCの利用価値を証明する。その過程において高難度のC-H結合活性化やC-C結合形成など有用な合成手法に直結する新規ケミストリーの発見を目指す。本研究ではCross-linked Protein-derived Cofactors (CPDC)を含んだ人工ラジカル酵素、特に酸素によって駆動する副産物の少ない酸化酵素を創製するべく、申請者が築き上げてきた金属イオンによる酸化的自己修飾反応を駆使することで、計画を実行した。具体的には以下に示すが、小さな分子量を持つキュピンタンパク質を土台とし様々な位置に導入したチロシンとシステイン間の架橋形成が可能であることを示した。特に、土台として用いたキュピンタンパク質がもともと持っているシステインを利用した場合、金属との配位による着色が観測され、この手法の有用性が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者らはProtein Databaseから小型(10kDa)で金属結合部位があり、かつ基質結合場を備えたいくつかの土台タンパク質候補の中から、double stranded β-helixモチーフを持つキュピンファミリータンパク質を用いてきた。3つのヒスチジンからなる金属結合部位に鉄や銅を接合し、Tyrを結合部位から距離を変えて変異導入した(残基番号:Ile49, Ile60, Cys106, Ile108)。そのうちのI60Y, C106Y, I108Y変異体ではTyr-Cys結合を形成させることに成功した。さらに、近傍の立体障害を取り除くことによって、その結合量を増大させることに成功した。このように最適化された変異体について、UV-visスペクトルやESR、共鳴ラマンスペクトルおよび質量分析、X線構造解析によって特性を評価し、結合周りの状態を詳細に検討した。このCPDCは既知であるものの関連のないタンパク質中で人工的に生起させた初めての例である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は天然にはないCPDC形成に挑戦する。天然で見られるCPDCの構造から、自己修飾によって生じた簡単なPDCが二種類の反応経路(Path A:キノンもしくはカルボニル化合物への求核付加反応, Path B:水素原子引き抜きに伴って生じたラジカル分子のラジカルカップリング)で生成すると考えられる。そこで、金属にはCu/Feを用いて、前者では近傍にCys, His (Lys, Tyr)などの求核性アミノ酸を導入した変異体を作製し、架橋構造形成の有無を確認する。また、後者では、近傍にTyrやMetを追加導入し、CPDCの形成を試していく。上記方法を遂行する際に困難が生じた場合は、同様のキュピンタンパク質のホモログに加え、小型でかつ安定であるタンパク質モチーフ、(partly opened β-barrelモチーフのVOCタンパク質(PDB: 3rmu))を選択し順次、上記方法を試していく。
|
Causes of Carryover |
タンパク質調整試薬を購入予定であったが、必要となる時期が一ヶ月ずれ込んだため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度開始とともに使用予定である。
|