2016 Fiscal Year Research-status Report
複素環縮環型および環拡大型ジアザポルフィリンを母核とするn型半導体の開発
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15K13762
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
俣野 善博 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40231592)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジアザポルフィリン / 二量体 / π拡張 / 複素環 / 光物性 / 電気化学特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子受容性と光捕集能を併せ持つ、複素環縮環型および環拡大型ジアザポルフィリンの化学性を明らかにすることを目的として、本年度は期間内に主に次の三つの課題に取り組んだ。(i) 複素環含有ジアザポルフィリンの合成、(ii) π拡張ジアザポルフィリンの合成、(iii) (i)と(ii)で合成したジアザポルフィリンの構造―物性相関の解明。まず、β無置換ジアザポルフィリンのβ位の位置選択的な化学修飾を行うことでβ-アミノジアザポルフィリンを合成した。次いで、アミノ体の酸化反応により、ピラジン縮環ジアザポルフィリン二量体あるいはラクトン環を内包するジアザポルフィリンを合成した。ここでは、用いる酸化剤の種類により異なる反応が進行することを見出した。新たに得られた化合物について、NMRスペクトル・吸収スペクトル・酸化還元電位の測定を行い、π系の構造と光物性・電気化学特性との相関を調べた。その結果、アミノ架橋やピラジン縮環によりジアザポルフィリンπ系が大幅に拡張され、一電子酸化・還元で生成するラジカル種が大きな共鳴安定化を受けること、および、ラクトン環の内包により電子受容性が大きく変化することなどが明らかとなった。また、得られたπ拡張ジアザポルフィリンの構造、電子受容性、および分子内電荷移動特性が架橋部の種類に大きく依存することを見出している。特に、ピラジン縮環体では可逆的な四電子還元が進行するという興味深い知見を手にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた合成ルートとは異なる方法を採用することになったが、初年度に得られた成果を基に数種類の複素環含有ジアザポルフィリンを合成することに初めて成功した。得られた誘導体の構造-物性相関の解明を優先したため、電荷移動度の測定については期間内に検討するには至っていない。しかしながら、各種の含窒素官能基を導入する目処は立ったので、研究計画全体としては順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた環拡大型およびπ拡張型ジアザポルフィリンの中から有望な骨格を選定し、大量合成へ向けより簡便な合成法を確立した上で、その諸物性を解明する。次いで、比較的高い平面性と高い電子受容性を有するジアザポルフィリン誘導体を用いて、当初の計画通り、電荷移動度の測定を行った上で有機薄膜太陽電池のn型半導体としての利用を図る。得られた知見をフィードバックすることで、最終的にはジアザポルフィリンを母核とする有機半導体の設計指針を提示したい。
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Causes of Carryover |
標的化合物の合成法の目処がたち、得られた化合物の基礎物性を評価することができたので、研究成果を論文としてまとめることを優先した。また、電荷移動度の測定に必要な量の化合物を手にすることができず、測定に用いる導電性ガラス基板などを平成28年度中に購入する予定がなくなったため、結果として消耗品費の支出が当初の想定額より大幅に減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、合成に不可欠な貴金属触媒やガラス基板など消耗品の購入費、および、研究成果を発表するための外国旅費として使用する。
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