2017 Fiscal Year Research-status Report
強い酸化還元作用を持つ拡大ワイドバンドギャップ半導体光触媒の創製
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15K13763
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
齊藤 結花 学習院大学, 理学部, 教授 (90373307)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 半導体光触媒 / 顕微分光 / レーリー散乱 / 紫外光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では半導体結晶の量子サイズ効果の理論に基づき、既存の光触媒材料バンドギャップを拡張して強い酸化還元作用を発現することを目的とする。光触媒は光エネルギーを吸収して電子と正孔対を形成し、有機物の分解や水素発生などの酸化還元反応を誘発する。バンドギャップの大きさは酸化または還元反応のエネルギーに直結するため、触媒機能発現に本質的な役割を果たす。今年度は、(1)可視光触媒材料であるがバンドギャップの上端が水素発生順位に近い三酸化タングステンWO3のナノ粒子を作成する.(2)顕微紫外共鳴レーリー散乱による単一ナノ粒子バンドギャップ測定技術を用いて、半導体量子サイズ効果の極限に現れる電子状態の挙動を実験的に検証することを行なった。 (1)水中に沈めたタングステン板にレーザーアブレーションを行い、得られたナノ粒子を焼結することで、WO3ナノ粒子を得た。XRDにより、WO3の確認を行なった。作成したナノ粒子をフィルターにかけてサイズ選別することにより、光学測定と評価に良好な状態を得た。AFM測定によると、サイズが20 nm以下の粒子も多く含まれている。 (2)顕微紫外共鳴レーリー散乱装置を用いて、個々のナノ粒子についてバンドギャップエネルギーを測定した。励起光源として200-1000nmの紫外域から可視域をカバーするブロードバンド白色光源を用いた。メカニカルに安定なステージを作成して、3時間を超える露光計測を実現した。試料中に存在する10 nm以下の単一ナノ粒子を複数測定して、散乱スペクトルのピーク位置から、粒子のサイズとバンドギャップの関係についての情報を得ることができた。 以上の(1)(2)に加えて、金を担持した二酸化チタン光触媒の作成もレーザーアブレーションによって行なった。同サンプルについても紫外共鳴レーリー散乱により測定をおこない、金属が担持の様子を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)半導体ナノ材料作成についての進展 近紫外から可視域にバンドギャップを持つWO3ナノ粒子の作成を、レーザーアブレーションを用いて学習院大学において行うことができた。市販の試薬を用いても類似の実験をすることができるが、自作が可能になったことによってパラメータを変えながら様々な大きさの粒子を用意することができるようになって、実験が大きく進展した。さらに、顕微分光に適切な観測条件をつくるためにこれまでは遠心分離を用いていたが、今年度からフィルターで処理したところ、適切な試料を容易に作成できることがわかった。 (2)測定手法と装置の改良についての進展 顕微紫外共鳴レーリー散乱装置は昨年度にすでに完成していたが、今年度はステージの安定性を向上させて、長時間に及ぶ露光に際して試料と対物レンズの距離が一定になる工夫をした。またデータの解析法を再検討して、バンドギャップエネルギーを求めるための関数の最適化を行なった。以上の工夫により、測定値の信頼性を向上させることができた。 以上の結果により、最終目標であるナノ粒子のサイズとバンドギャップエネルギーの関係を求めるという当初の目標をぼぼ達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
貴金属を担持した半導体光触媒ナノ材料の研究 現在WO3について良好な実験結果を得ている。今年度、金を担持したTiO2ナノ粒子の試作と評価を行なって、良い感触をえている。金属を担持することで、光触媒が生成する電子とホールの寿命を延ばすことができる可能性がある。また、可視光利用という観点から、金や銀などの貴金属が媒体となる表面プラズモンポラリトンを利用することが有効であると考えられる。このような理由から、今後は半導体光触媒単体ではなく、複合材料の評価に研究を展開していく。 フォトルミネッセンス測定システムの追加 ナノ粒子材料は、しばしば欠陥を含有し、その存在が電子とホールの生成と消滅に大きな働きをする。そのため、バンドギャップ測定に加えて、欠陥の状態を調べる分光法を同じシステムに組み込むことを計画している。本目的を達成するために、試料を冷却するセルの設計を行い装置の拡張をすすめる。 分光システムの合理化 現在用いている分光システムは、半導体材料の評価に広く利用することができる。しかし現在は特別なトレーニングをつんだ人のみ利用することが可能な状態にあるので、装置をモジュール化することで近い将来様々な分野のユーザーを見込む分光システムとして完成度を高めたい。
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Causes of Carryover |
本年度、紫外レーリー散乱分光に加えてフォトルミネッセンス測定を計画している。フォトルミネッセンスの測定のために、試料冷却セルを導入することを計画している。このセルの設計と部品の調達に時間を必要としたため、予算の使用状況に遅れが生じた。今後はフォトルミネッセンスシステムの構築に、残りの経費を用いる予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Direct and Indirect Interlayer Excitons in a van der Waals Heterostructure of hBN/WS2/MoS2/hBN2018
Author(s)
Okada M, Kutana A, Kureishi Y, Kobayashi Y, Saito Y, Saito T, Watanabe K, Taniguchi T, Gupta S, Miyata Y, Yakobson BI, Shinohara H, Kitaura R
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Journal Title
ACS Nano
Volume: 12
Pages: 2498-2505
DOI
Peer Reviewed
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