2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K13769
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
吉川 浩史 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60397453)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属有機構造体 / 炭素材料 / 二次電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、新たな多電子レドックスMOFとして、2電子の酸化還元反応を示すアントラキノンジカルボン酸配位子とMnイオンから成る新規Mn-MOFを作製した。この物質は、Mn7核クラスターがアントラキノンジカルボン酸により架橋された三次元構造を有し、1次元チャネルが形成されている。これを正極活物質とする二次電池を作製し、その電池特性を測定したところ、1サイクル目の充電過程で70 Ah/kg、その後の充放電過程では、2段階のプラトーを示しながら200 Ah/kgの充放電容量を安定に示すことが明らかとなった。この電池反応機構を解明するために、X線吸収微細構造分析を行ったところ、Mnイオンの酸化還元、アントラキノンの酸化還元の両方によって、この電池が駆動していることが明らかとなった。さらに、ジスルフィド系配位子を有する多電子レドックスMOFの開発にも着手し、大きな容量が得られつつある。 一方で、MOFを鋳型とする新たな炭素材料(MTC)の開発については、テレフタル酸を架橋配位子とする亜鉛錯体MOFを合成し、これを窒素ガス雰囲気下550度で加熱して炭化させた後、塩酸処理により酸化亜鉛を取り除き、MTCを得た。窒素ガス吸着による表面積測定の結果から、MTCはメソ孔を有することが示唆され、その比表面積は単層カーボンナノチューブやグラフェンよりも大きく、高表面積なナノカーボンを作製できた。なお、亜鉛錯体MOFについては、合成条件を様々に変更することで、その粒子サイズや形状を変えることができており、このような粒子径の異なるMOFを焼いた場合に、得られる炭素がどのように変化するかを検討する予定である。また、今後は得られたMTCを用いて、様々な正極活物質のナノ複合化などを進める予定であり、その電池特性なども検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多電子レドックスMOFの創製と高容量電池の開発という点で、従来のリチウムイオン電池よりも大きな容量と安定なサイクル特性が得られているため、研究はおおむね計画通りに順調に進展している。また、これまでとは異なる酸化還元配位子であるジスルフィド配位子を用いたMOFの作製とこれを正極材料とする電池の作成にも成功していることから、問題はない。 一方で、MOFを鋳型とする炭素材料の作製については、高表面積かつ空孔を有する炭素材料の作製に成功しているため、順調に進行はしているが、エネルギー材料への応用の点で課題が残った。現在、炭素材料の基となるMOFの粒径制御などに成功していることから、今後は得られる炭素の粒径制御なども試み、まずは電池電極材料としての応用を検討する。 このように、MOFを基盤とする新しいエネルギー材料の創製と応用という観点で、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高容量を示す多電子レドックスMOFとしてジスルフィド配位子を有するMOFの開発に注力し、配位子の長さや空孔の大きさがどのように電池特性に影響を与えるかなどを検討する。 一方で、MOFを鋳型とする炭素材料については、より様々なMOFを作製し、それらを鋳型とする炭素材料を開発することで、鋳型となるMOFの構造が得られる炭素材料に与える影響を調べる。また、このようにして作製した炭素材料について、二次電池用電極やキャパシタ電極としての応用を検討する。 このように、MOFを基盤とする新しいエネルギー材料の創製と応用研究を2つの観点からさらに推し進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
設備備品に関しては、すでに研究室にあるものを使用しながら研究を順調に進めることとができたため、研究に必要不可欠な試薬類、ガラス器具類、電池部材などの消耗品類に使用するにとどまった。一方で、旅費に関しては、本研究費でのみ得られた成果に関する学会発表を行わなかったために、使用することができず、これが次年度使用額が生じた大きな理由と考えている。いずれにしても、研究が順調に進展したために生じたものであると思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、より多くの金属有機構造体の作製などが必要であると考えており、そのために必要な試薬類などの消耗品はもとより、作製に必要な少額の物品(炭素の作製に必要な電気炉など)にも使用する予定である。また、今年度得られた成果を学会発表する時期に来ており、学会発表などの旅費にも使用したいと考えている。さらに、研究員雇用や研究協力者である大学院生らが合成などに従事することへの謝金にも使用し、研究をより効率的に行っていきたいと考えている。
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