2015 Fiscal Year Research-status Report
刺激応答性近赤外色素-高分子複合材料の開発と生体応用
Project/Area Number |
15K13770
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 康嗣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60422979)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | pH応答性 / 近赤外色素 / 腫瘍 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
pH応答性を示す色素のうち、腫瘍近傍の弱酸性を認識して応答するものは少ない。また、生体イメージングに利用可能な近赤外色素に限れば、ほとんど知られていない。それゆえ、そのような応答をする色素を開発できれば、腫瘍の高コントラストな可視ニアにつながると言える。 本課題では、近赤外色素インドシアニングリーン(ICG)の構造に着目し、ベンゾインドールの窒素原子上に求核置換基を持つ色素を設計、合成した。この色素は求核置換基の水素原子がプロトンとして脱離し、ベンゾインドールのイミン部位に分子内求核付加することで、近赤外領域に示す光吸発光特性を失う。求核置換基としてメルカプト基を有する色素は、中性環境では閉環構造となり、近赤外領域に吸発光特性を示さないが、弱酸性環境(pH 6以下)で近赤外領域に吸発光特性を示すことを見出した。また、PEG化した色素は水中で自己集合体を形成したが、pH応答性を失うことはなかった。 PEG化したICG誘導体を造影剤として用いる光腫瘍イメージングの結果、腫瘍の可視化が可能であることを示した。また、PEGの長さが長くなるにつれて腫瘍への集積性が高くなることを示した。 これらのpH応答性ICGは、自己集合体の疎水性コアにおいて徐々に開環構造が優先されることを見出した。疎水性分子とPEGの複合材料が形成する自己集合体内部にこれら色素を取り込ませることで、この予期しなかった開環構造への変化を抑制できることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では昨年度、pH応答性ICG類縁体を合成し、腫瘍近傍の弱酸性に応答し、近赤外領域に吸発光特性を示すことを明らかにした。特にメルカプト基を有する色素が望む応答に近いことを見出した。これらは当初研究計画に記載した内容が順調に進捗していることを示す。 また、本課題では昨年度、合成したICG類縁体を用いる光腫瘍イメージングも行い、造影剤として機能することも見出した。このことは、当初記載した平成28年度の研究計画に含まれており、計画以上に進捗していることを示す。 さらに、本課題では昨年度、合成したICG類縁体が高分子自己集合体の疎水性コア内部で予期しない開環構造への変化を起こすことを見出した。また、疎水性分子-PEGの複合体が形成する自己集合体に内包させることで、この現象を抑制できることも見出した。このことは当初研究計画に含まれていない新しい知見の発見であり、計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、疎水性分子とPEGの複合材料が形成する自己集合体に内包させたpH応答性ICGを用いる光腫瘍イメージングを行い、これらが有望な造影剤であることを示す。また、時間経過とともに観測されていた開環構造への変化を、様々な疎水性分子の構造と比較し系統立てて考察することを目指す。 平成28年度は、合成したpH応答性ICGを用いる光腫瘍イメージングを検討し、実際に腫瘍近傍のpHに応答しているのかどうか明らかにしたい。特に、pH応答性を持たない色素と複合化し、これを内部標準とする評価系を構築して、上記の評価に適用する。これらを精査し、腫瘍のみを高コントラストに可視化できる光腫瘍造影剤を開発する。
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Research Products
(24 results)