2015 Fiscal Year Research-status Report
人工血管を指向した生体融和多機能タンパク質材料の構築
Project/Area Number |
15K13781
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小畠 英理 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00225484)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タンパク質 / 人工血管 / 生体融和材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で使用する人工血管等の高分子材料に高密度配向集積する多機能タンパク質材料を開発するため、構造部位として人工血管内面に集積する基本骨格配列を、天然エラスチンの配列に基づいて設計した。エラスチンに存在する (APGVGV)nや(GVGVP)nといった特徴的な繰り返し配列は疎水性に富み安定な構造を形成するため、ePTFEの疎水性表面に疎水性相互作用により容易に集積することができる。またもともと生体由来の配列であるため、生体適合性に優れているという大きな利点がある。一方機能部位として、細胞接着能を有するフィブロネクチン由来のRGD配列、ラミニン由来のIKVAV配列等を利用した。これらの配列はそれぞれ細胞膜表面のレセプターを介して細胞接着することが知られている。血管内皮細胞が生着すれば、血小板の吸着を抑制できるため材料表面に血小板の凝集、血栓形成が起こらず、小口径動脈用の人工血管が構築可能であり、また長期使用に耐え得ることが期待される。以上の、構造部位、機能部位を組み合わせて設計したアミノ酸配列に基づいて遺伝子構築を行い、大腸菌で遺伝子発現が可能な発現ベクターを作製した。このベクターを大腸菌に導入して組換え大腸菌を作製し、目的のタンパク質を得ることができた。 得られたタンパク質を、人工血管材料として多用されているePTFE表面に集積した。集積状態は抗体を利用した免疫化学的手法により評価した。その結果、タンパク質がePTFE表面に、疎水性相互作用により強固に集積できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、生体内で使用する人工血管等の高分子材料に高密度配向集積する多機能タンパク質材料の開発を目的として行っている。 この目的を達成するために、現在までに基本骨格となるタンパク質の構造ユニット、および細胞機能を制御する機能ユニットを設計し、これらのユニットを一体化したタンパク質材料を遺伝子工学的に合成した。さらに、これらのタンパク質をePTFE表面に集積して、人工血管材料としての基本的特性を評価した。研究は予定通り順調に進んでおり、現在までのところ当初の目標をほぼ達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに設計・合成したタンパク質の機能評価を行う。主として細胞、血液等の生体成分に接触させたときの生体融和性を調べる。タンパク質材料に求める具体的な目標性能は、①集積強度:通常血管内面が受ける血流によるシェアストレスより大きなストレス下においても集積したタンパク質がはがれない、②細胞接着能:通常血管内面が受ける血流によるシェアストレスより大きなストレス下においても接着した細胞がはがれない。細胞の接着能としては、天然のコラーゲンと同等あるいはそれ以上を目標とする、③血小板吸着:通常血管内面が受ける血流によるシェアストレスより小さいストレス下においても血小板が吸着せず血栓が生じない。以上を目標にして、以下の評価を行う。 1.細胞接着能の評価:ePTFE表面に集積したタンパク質材料に血管内皮細胞を播種し、生理食塩水フローによるシェアストレス下細胞接着状態を評価する。 2.血小板吸着阻害の評価:ePTFE表面に集積したタンパク質材料に血清を添加し、血小板の吸着状態を評価する。 3.人工血管材料としての総合評価:ePTFEで加工したチューブ内面にタンパク質材料を集積し、その表面に血管内皮細胞を播種・接着する。ここに血液を流して細胞接着、血小板吸着に関する特性を詳細に検討し、小口径人工血管材料としての性能を総合的に評価する。
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Causes of Carryover |
当初の予定通り、ePTFE表面に集積するタンパク質を設計・合成し、その特性を評価した。研究を進めるにあたり計上していた人件費・謝金を使用しなかった。人件費・謝金に関しては、実験補助員の雇用を予定していたが、実験を担当している大学院生により十分に研究を進めることができたため、雇用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
より優れた材料開発を行うため、また実験の再現性を慎重に評価するため、当初予定していた研究より多くの実験を行う予定である。したがって、生じた次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせて、主として物品費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)