2015 Fiscal Year Research-status Report
高分子ナノ構造・一分子解析のための超解像ラマン顕微分光システムの開発
Project/Area Number |
15K13783
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
前田 寧 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60242484)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 顕微分光 / 1分子計測 / 分子分光 / ナノ材料 / 高分子構造・物性 / ラマン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
超解像ラマン顕微分光システムの試作 2台の超解像ラマン顕微分光システムの試作を行った。1台はラマン分光光度計(堀場JY)と倒立型顕微鏡(ニコン)、原子間力顕微鏡(AFM、ソーラボ)を組み合わせて試作している。倒立型顕微鏡の試料台上にAFMを設置して、試料の光学顕微鏡像とAFM像の観察が可能になっている。AFM像を測定した後に、試料のねらった位置へ探針を移動させて超解像ラマンスペクトルを測定した。励起He-Neレーザ光は試料の下側から100倍の対物レンズを通して照射して、後方に散乱されたラマン散乱光を同じ対物レンズで集光して分光器に導いた。試料は、銀または金をコートしたカバーガラス上に載せ、金または銀を蒸着した探針とのギャップに誘起される局在プラズモンのホットスポットによりラマン散乱を増強させた。2台目の装置は正立型顕微鏡(オリンパス)と倒立型顕微鏡(ライカ)を同軸で組み合わせており、試料に対して透過配置と反射配置の両方で顕微鏡像の観察とラマンスペクトルの測定が可能である。励起光としてDPSSレーザ(532nm)を用い、スペクトルは冷却CCD検出器(プリンストンインスツルメント)で検出した。試料の位置はピエゾステージで制御しており、ナノメーターの精度でラマンスペクトルのマッピング測定が可能である。また、バンドパスフィルターを通して特定の波長のラマン散乱を選択的することで、冷却CCDカメラ(浜松ホトニクス)でラマン散乱光像を直接観察できるようにした。さらに、試料を銀蒸着膜または銀マイクロプレートの上に載せ、電解研磨した銀線の先端とのギャップに誘起される局在プラズモンによりラマン散乱を増強させることで超解像ラマンスペクトルを測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置の試作がおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
試作した超解像ラマン顕微分光システムを用いて高分子試料のナノメートルサイズでの構造解析を行う。 ① 単一温度応答性高分子鎖のコイル-グロビュール転移の解析 ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PNiPAm) などの温度応答性高分子を用いて水中で一分子測定を行う。コイル-グロビュール転移に伴う張力の変化とアミド基の水素結合、主鎖のコンフォメーション変化を同時に測定して温度や延伸の影響を検証する。次にそれぞれ探針と金蒸着膜に固定した2本のPNiPAmのスペクトルと分子間力の測定を行う。アミドIおよびIIバンドより見積もられるポリマー間水素結合数と相互作用力の相関を解析する。さらに、ポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド)やポリ(N-イソプロピルメタクリルアミド)などの他の温度応答性高分子に対して同様な測定を系統的に行って結果を比較し、分子間力に対する水素結合と疎水性相互作用の寄与の大きさの定量を試みる。 ② 高分子太陽電池の光反応のナノ空間時間分解スペクトルの測定 ポリチオフェン誘導体とフラーレン誘導体のナノ相分離構造による高分子太陽電池の解析を行う。まず、AFM像またはSTM像を観察し、適した範囲のラマンマッピング測定をNd-YAGレーザ(532 nm)とCCD検出器を用いて行う。各成分に特徴的なピークの強度より組成分布を、ピーク波数より分子間相互作用の強さを求め、界面からの距離の関数として評価する。次に、特定の位置に探針を移動させ、パルスレーザ、Nd-YAGレーザ(1064 nm)とPMT検出器を用いて時間分解測定を行う。励起中間体濃度の減衰速度を界面からの距離の関数として求める。このような測定を導電性高分子やアクセプター分子の種類を変えて測定し、反応速度や反応機構とドナーとアクセプターの構造や特性、セル構造や反応光の波長との関係を解明する。
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