2015 Fiscal Year Research-status Report
高伸縮性超分子エラストマーの創製:従来分子設計における盲点への着眼
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15K13785
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野呂 篤史 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90377896)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エラストマー / 超分子エラストマー / 超分子ソフトエラストマー / 非共有結合 / 高伸長能 / 高応力発生能 / ブロック共重合体 / 可逆的付加開裂連鎖移動重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、高伸長可能(最大伸び>2000%)な超分子エラストマーを調製するためにガラス状A鎖と高分子量の水素結合性溶融B鎖とからなるABAトリブロック共重合体を合成した。 二官能性RAFT剤とスチレンとを混合・加熱することで、室温においてガラス状のポリスチレン(S)を合成した。得られたSポリマーをマクロRAFT剤として、さらにアクリル酸ブチル、アクリルアミドと混合・加熱し300MPaの高圧下で共重合することで、ポリスチレン-b-(ポリアクリル酸ブチル-co-ポリアクリルアミド)-b-ポリスチレン(以下S-Ba-Sと記述)を合成した。ポリスチレン、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリルアミドの重合度はそれぞれ365、21000、6300であり、Ba中央鎖の数平均分子量は314万であった。溶融成分であるBaの組成が0.99であるにもかかわらず、自立性を示す膜となった。引張試験の結果、中程度の応力を発生し、最大応力が3.6MPa、破断伸びが2030%、応力-ひずみ曲線の内面積から求まるタフネスが28 MJ/m3であり、高応力・高伸長を同時に示す水素結合性超分子エラストマーとなっていることが分かった。 一方、対照試料としてアクリルアミドを含有しない同分子量程度のポリスチレン-b-ポリアクリル酸ブチル-b-ポリスチレンも合成したが、自立性がなくかつ高粘着性の試料であった。 上記成果については高分子学会、レオロジー学会等で発表予定である。また英語論文としてすでに発表し、雑誌の裏表紙(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/marc.201670030/abstract)でも取り上げられた。さらに超分子エラストマーと関連して弾性率調節が可能な超分子ソフトエラストマーも開発し、特許を出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時点の目的は高伸長可能(最大伸び>2000%)な超分子エラストマーの実現であり、平成27年度の研究ではほぼこれを達成することができた。さらに超分子エラストマーの概念を拡張させた超分子ソフトエラストマーに関する研究も始めており、当初計画以上の進展が見られている。
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Strategy for Future Research Activity |
超分子エラストマーの概念をより一般化した超分子ソフトエラストマーを調製し、その機能化、他物質とのハイブリッド化に関する研究を進める。また実用系熱可塑性エラストマーを利用した超分子エラストマーの調製にも取り組む。
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Causes of Carryover |
英語論文の発表費の支払いが済んでいないために残額があるように見えるが、実質の残額はゼロである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文発表費の請求があり次第、その支払い費用として使用予定である。
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