2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞を架橋点とするスマートゲルの創製とゲル内細胞反応を利用した機能創発
Project/Area Number |
15K13791
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
長濱 宏治 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (00551847)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 機能性ハイドロゲル / 刺激応答ゲル / 細胞表面クリック反応 / 細胞機能利用 / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、生細胞と高分子化合物との細胞表面クリック反応により、細胞を架橋点とするハイドロゲルの作製に取り組んだ。具体的には、合成したアジド基修飾マンノサミンを培地中に添加することで、細胞の糖代謝反応を利用して細胞膜タンパク質の糖鎖末端シアル酸にアジド基を導入した。この反応は浮遊細胞、付着細胞、がん細胞、正常細胞など普遍的であることを確認した。アジド基修飾をしても細胞は生存しており、一般的な細胞反応は非修飾細胞と同程度であることも確認した。得られたアジド基提示細胞のアジド基は培地中で様々なアルキン化化合物とクリック反応が進行し、生じた結合は数日間安定に残存することが分かった。そこで、シクロオクチン基を側鎖に複数導入したポリ(γ-グルタミン酸)を合成し、培地中でアジド化細胞と反応させたところ、細胞とポリ(γ-グルタミン酸)間でクリック反応が進行し、細胞が高分子により架橋されたハイドロゲルを形成した。用いる細胞濃度と高分子濃度を変化させることにより、ハイドロゲルのサイズをある程度制御することが可能であった。このゲルは力学的に安定で、ピペッティング操作でも崩壊しなかった。細胞の選択的物質取り込み特性を利用することによりハイドロゲルに機能物質を担持でき、細胞のアポトーシス誘導をトリガーとし機能物質はゲル外放出された。以上より、細胞表面クリック反応による細胞架橋ゲルの作製に成功し、細胞反応を利用してゲルの高次機能を付加できることも実証した。 以上の成果を国内学会にて複数回発表し、高い評価を得ている。また、本研究成果をまとめた英語論文を国際的学術誌(Scientific Reports誌)に投稿し、現在査読中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、「細胞架橋ゲルの作製」および「ゲル内で起こる細胞反応の定量解析」を計画していた。実際に上記通り、細胞架橋ゲルの作製方法を確立し、ゲル内の細胞反応を定量解析したため、本課題は概ね計画通りに進行していると評価できる。しかし、ゲルの物性解析として計画していたゲルの粘弾性解析は行えていないため、次年度に実施する。また、ゲル内での細胞反応として、細胞増殖・代謝反応は解析したものの、細胞分裂や遊走、細胞間結合形成などは未解析であるため、次年度実施する。一方、次年度に実施する予定であった「ゲル内の細胞反応を利用したゲルの機能創発」について、一部内容を先行して実施した。以上、年度をまたいで研究の進行順序は多少変わったものの、平成27年度では概ね順調に研究計画が進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、前年度に完遂できなかった「ゲル内で起こる細胞反応の定量解析」に関して、特にゲル内の細胞の細胞分裂、細胞遊走、細胞間結合形成について実施する。また、同じく未実施であったゲルの粘弾性解析を行う。当初より計画していた「細胞反応を利用したゲルの機能創発」について、細胞分裂、細胞増殖、細胞遊走、細胞間結合形成を利用したゲルの機能創発を実施する。本計画の遂行する上で問題は見当たらず、停滞や遅れなく研究計画を推進できると考えている。
|
Causes of Carryover |
前述のとおり、実験計画に年度をまたいだ順序変更が生じたため、物品費に差額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度未実施の実験を今年度実施するため、繰り越し分は物品費として使用する。
|