2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞を架橋点とするスマートゲルの創製とゲル内細胞反応を利用した機能創発
Project/Area Number |
15K13791
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
長濱 宏治 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (00551847)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ハイドロゲル / 細胞 / 高分子 / 機能性材料 / 刺激応答ゲル / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度では、生細胞と高分子化合物との細胞表面クリック反応により、細胞を架橋点とするハイドロゲルの作製に取り組んだ。また、得られた細胞架橋ゲル内での細胞の機能解析およびゲル内で細胞が起こす反応を活かしてゲル全体に機能を与えることに取り組んだ。 具体的には、アジド基修飾マンノサミンを培地中に添加して3日間培養することで、細胞膜糖タンパク質の糖鎖末端シアル酸にアジド基を導入した。この反応は、血球細胞、上皮細胞、筋細胞、線維芽細胞、マクロファージなど様々な細胞種で起こることを確認した。細胞表面に提示されたアジド基は、培地中で蛍光色素や高分子など様々な分子とクリック反応でき、形成された結合は1週間程度は安定に残存することがわかった。細胞を架橋するクリック反応可能な高分子として、アザシクロオクチン基を側鎖に結合した分岐型アルギン酸(bAlg-DBCO)を合成した。アジド化細胞のペレット(2.0×10^6)をbAlg-DBCOの2%水溶液で懸濁し37℃で反応させたところ、5分後にはハイドロゲルを形成した。ゲルは力学的に安定で、ピンセットなどで掴むことができるほどの高いハンドリング性を示した。培地に浸して培養したゲル内の細胞は95%以上の高い生存性を1週間は維持し、増殖することも明らかになった。つまり、私たちが作製した細胞架橋ゲルは“生きているゲル”であることが実証され、世界初の成功例である。 ゲルをコラーゲンコートシャーレ上で培養すると、ゲル内の細胞の基質接着反応によりゲル全体がシャーレに接着した。一方、細胞非接着処理したシャーレではゲルは接着しなかった。つまり、ゲル内の細胞反応をゲル全体の機能として変換・増幅できることを世界で初めて示した。 以上の成果を国内外の学会で発表し、高い評価を得ている。また、本成果をまとめた論文を現在作成中である。平成29年度には論文発表できる見通しである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、「細胞架橋ゲルの作製」および「細胞反応を利用したゲルの機能創発」を計画していた。実際に上記の通り、様々な細胞種を用いて細胞架橋ゲルの作製に成功し、“生きているハイドロゲル”の概念を世界に先駆け提唱した。また、細胞の接着反応を利用してゲル全体を基板に接着させることにも成功した。接着反応以外にも、細胞分裂や細胞分化、細胞組織化、細胞遊走など様々な細胞反応を利用可能だと想定しているが、平成28年度には実験できなかったため、次年度に実施する。 本研究内容の一部を論文発表できた。以上、一部に実験の遅れがあったものの、研究目的はほぼ達成されており、概ね順調に研究計画が進行していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、前年度に完遂できなかった「ゲル内で起こる細胞反応を利用したゲルへの機能創発」について実施する。特に、細胞反応として、細胞分裂や細胞分化、細胞組織化、細胞遊走について、それらがゲル全体にどのような機能をもたらすのか解析する。以上をまとめて、平成29年度には論文を国際誌に掲載する。 本計画を遂行する上で問題は見当たらず、停滞や遅れなく研究計画を推進できると考えている。
|
Causes of Carryover |
研究計画は概ね順調に進行しており、細胞架橋ゲルの作製および細胞反応活かしたゲルの機能創発にも成功している。一方、これらの研究成果を論文投稿するために、さらに追加で機能創発実験を行う必要があるが、平成28年度内では実施しきれず、平成29年度に実施することになった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験に必要な物品費、研究装置を他大学で使用させてもらうための旅費、学生の実験補助に対する謝金、論文原稿の英文校正費、論文投稿料・掲載費として使用する。
|
Research Products
(6 results)