2015 Fiscal Year Research-status Report
革新的酸素ガス製造技術のための酸素貯蔵材料の高機能化
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15K13793
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
本橋 輝樹 神奈川大学, 工学部, 教授 (00323840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 美和 神奈川大学, 工学部, 助教 (60594215)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セラミックス / 酸素貯蔵材料 / 酸素ガス製造 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度変化に応答して顕著な酸素吸収放出を示す「酸素貯蔵材料」の高性能化を図り、製鉄所や化学プラントにおける革新的な酸素ガス製造技術への応用展開を図る。本研究では、申請者が開発した新規酸素貯蔵材料:温度変化に応答して酸素ガスを吸収放出する層状マンガン酸化物Ca2AlMnO5+δに着目し、当該材料に対する化学組成制御と微粒子化プロセス開発により低温での酸素吸収放出特性を向上させ、温度スイングのみで多量の酸素ガスを製造可能な革新材料の創製を目指す。 酸素貯蔵材料Ca2AlMnO5+δについて、合成法の最適化を行った。クエン酸法で得た前駆体を空気中1000℃で仮焼した後にターボ分子ポンプ(TMP)で減圧しながら1000℃で本焼成することにより、単一相試料を得ることに成功した。TMP減圧下で本焼した試料は酸素欠損サイトの秩序度が高く、優れた酸素吸収放出特性を有することが明らかになった。 Ca2AlMnO5+δの結晶中で骨格構造を形成するCaサイトへSr置換した(Ca(1-x)Sr(x))2AlMnO5+δを合成し、酸素吸収放出特性を調べた。x=0.4以下の組成範囲について合成を試みたところ、x=0.3以下で単一相を得た。格子体積はx=0.2以下でSr置換量に対して直線的に増加した。各試料を酸素気流中でTG分析したところ、Sr置換していないx=0において酸素吸収に伴う重量増加は3.1wt%に達し、Sr量の増加に伴いわずかに低下した。一方で、Sr置換した試料の酸素吸収放出温度はSr置換しない場合と比べ最大で100℃ほど低温化し、CaサイトへのSr置換が動作温度低温化に対して効果的であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究目的を目指して、当年度は酸素貯蔵材料Ca2AlMnO5+δの化学組成制御と微粒子化プロセス開発を検討した。その結果、結晶粒の肥大化が起こらない比較的低温での焼成において、優れた特性を示す高品質試料の合成に成功した。また、CaサイトをSrで部分置換することにより、酸素吸収量をあまり低下させることなく動作温度の低温化に成功した。これらは研究目標達成に向けて重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
・酸素吸収放出メカニズムの解明 プロトタイプであるCa2AlMnO5+δ、および化学置換を施した(Ca,Sr)2AlMnO5+δとCa2(Al,Ga)MnO5+δについて、一定温度での酸素吸収放出反応の経時変化を詳細に調べることにより、反応速度論に基づき反応機構を考察し、酸素吸収放出反応の律速過程を特定する。 ・酸素吸収放出応答性向上のための化学組成最適化 上記の研究成果に基づき、酸素吸収放出反応における律速過程の加速化を図る。化学組成最適化した実用候補材料を選別する。
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Causes of Carryover |
主に下記2つの理由により本年度支出が縮小し、次年度使用額が生じた。(1) 当初着目していた元素置換に関して望ましい結果が得られたため、別材料の合成に手を伸ばす必要がなくなった。(2) 2015年12月に国内の国際会議での招待講演(口頭20分)の誘いを受けたため、海外での国際会議への出席を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
酸素吸収放出の反応速度論に着目した熱分析実験を計画しており、当該助成金の一部はその消耗品に充てる。
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