2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13804
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
小松 高行 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60143822)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ガラス / 結晶化 / 密度 / 強弾性結晶 / 自己微粉化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ガラスの密度が対応する結晶よりも大きいという、これまでに報告されたことのない酸化物ガラスの構造と、自己微粉化という特異な結晶化挙動を解明すること目的とする。本年度得られた結果を以下に示す。 1) 21.25RE2O3-63.75MoO3-15B2O3組成(RE:希土類)のガラスの密度dは、d=4.650- 4.826 g/cm3であり、対応するRE2(MoO4)3結晶の密度d=4.4054.628 g/cm3より大きいことを再測定により実証した。2)ガラス(RE=Gd)と自己微粉化結晶化ガラスの極低温までの磁化率測定より、Gd3+イオンはクラスターなどを形成せず、いずれも均一に分散していることを明らかにした。また、希土類の種類に依存せず、ガラス転移温度はほぼ一定であった。3)ラマン散乱スペクトルより、ガラスのナノスケールでの不均一構造は、RE2O3-MoO3成分に富んだフラジャイル部分とB2O3成分に富んだストロング部分から成ることを提案した。4)自己微粉化を起こす特異な結晶化機構の解明のため、自己微粉化を起こさないガラス系の探索も行った。20Gd2O3-60MoO3-20TeO2, 21Gd2O3-63MoO3-10TeO2-6B2O3, 21Gd2O3-63MoO3-8TeO2-8B2O3, 21Gd2O3-63MoO3-6TeO2-10B2O3(GM6T10B)ガラスを検討した。特に、TeO2とB2O3の2種類のガラス形成成分を含んだGM6T10BガラスではGd2(MoO4)3結晶が単相で析出すると共に、自己微粉化が抑えられことを見出した。このガラス系は、ガラス構造と特異な結晶化挙動との相関解明に格好の物質であると期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、密度が逆転したガラスのガラス構造を解明すると共に、ガラス構造と自己微粉化という特異な結晶化挙動との相関を明らかにするものである。本研究を通じ、現在のガラス構造の基本概念である不均一ナノ構造モデルに対し、一石を投じると共に、新たな展開に繋げることを目指している。この研究でのキーポイントは、RE2(MoO4)3結晶という強弾性結晶が生成する様々なガラス系を見出し、結晶化に伴う自己微粉化の有無を調べ、特異な結晶化に対する一般性や個別性を明らかにすることである。特に、自己微粉化現象は、結晶化過程でバルク(板)状のガラスが非常に微細な粉末になることであり、熱処理後の冷却過程で微粉化したのではなく、結晶化中に起きているために、その解明には実験上の困難さを伴っている。これまで、RE2O3-MoO3-B2O3系ガラスを対象にして、ガラスの基礎物性と構造を調べてきたが、新たに、TeO2とB2O3の2種類のガラス形成成分を含んだRE2O3-MoO3-TeO2-B2O3系ガラスでもRE2(MoO4)3結晶が生成し、かつ、自己微粉化現象の抑制が見出されたことは大きな進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究おいて、TeO2とB2O3の2種類のガラス形成成分を含んだ21Gd2O3-63MoO3-6TeO2-10B2O3ガラスにおいてGd2(MoO4)3結晶が単相で析出すると共に、自己微粉化が抑えられという知見は、本研究の目的であるガラス構造と特異な結晶化挙動との相関解明に重要な意味を持っている。今後は、21.25RE2O3-63.75MoO3-15B2O3ガラスと21Gd2O3-63MoO3-6TeO2-10B2O3ガラスの種々の物性、ガラス構造、結晶化挙動の比較検討を重点的に検討する計画である。具体的には、新規に開発した21Gd2O3-63MoO3-6TeO2-10B2O3ガラスの基本物性の精密測定(密度/屈折率/ヤング率測定)と原子(イオン)パッキング状態の解析、ラマン散乱スペクトル/希土類イオンの蛍光スペクトル測定によるガラス構造解析を行う。また、示差走査熱量計(DSC)及び光学顕微鏡観察による結晶成長速度の決定、複屈折イメージング測定による結晶形態と結晶成長方位の関係を明らかにする。さらに、レーザー誘起結晶化によるGd2(MoO4)3結晶のパターニングを行い、特異な結晶成長に対するガラス組成の影響についても調べる計画である。
|
Causes of Carryover |
本研究は、ガラスの結晶化過程における自己微粉化現象の解明が大きな目的であるが、研究過程において、偶然に、自己微粉化現象を起こさない結晶化プロセスを発見した。強弾性結晶からなる、バルク状の結晶化ガラスの作製は世界で初めてであり、新たな実験と学会発表を次年度に追加することにした。助成金の一部を、次年度の追加実験等に使用計画に変更した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
自己微粉化現象を起こさないガラスの結晶化プロセスの詳細な実験と得られたバルク状結晶化ガラスの微細構造と光学的および機械的特性を調べる。新たなガラス試料の作製、走査型電子顕微鏡による微細構造観察、ビッカース硬度測定、成果発表旅費に使用する。
|
Research Products
(5 results)