2015 Fiscal Year Research-status Report
電気化学振動波のパターン認識による隙間腐食診断装置の開発
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15K13806
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深見 一弘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60452322)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 隙間腐食 / 鉄 / 電流振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
目視では確認できない隙間腐食を診断するシステムの開発に向けて検討を進めた。隙間腐食が進行しているであろう鉄をアノードとし、電位を印加することで自発的に生じる電気化学振動を利用して腐食の診断を行うため、隙間鉄電極の場合とバルクの電解液に接した鉄電極の場合に得られる電流振動の波形を計測した。バルクの電解液に接した鉄電極の場合、不導体状態から活性溶解状態へと変化した後、暫く活性溶解が維持されてから再不導体化に至る。ところが、隙間での鉄電極の場合、不導体状態から活性溶解に変化すると、途端に電流が減少し始め、すぐに再不導体化に至ることが分かった。隙間で見られたような急速な再不導体化は溶液のpHが低いときにみられる電流振動と酷似しており、隙間内ではpHがバルク溶液と比較して低下していることが示唆された。また、電流振動の振幅から、活性溶解に寄与している面積が計算され、隙間の開口部に近い部分のみが振動反応に寄与していることが分かった。また、光学顕微鏡観察から調べた電流振動に寄与する面積と、波形の解析から予想される面積が良い一致を示すことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
隙間での鉄電極のアノード分極化では、隙間でのpHの低下、および電極の一部のみ振動反応に関与することが電流振動波形から解析可能であることが明らかとなり、初年度は当初の予定通り進んでいる。シミュレーションによる時間的・空間的な振動反応の再現も取り組みつつあるが、この点に関してのみ当初の予定より少し遅れているものの、次年度で十分に対応可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは隙間での鉄電極における振動反応の時間的・空間的パターン形成のシミュレーションを可能にすることを目指す。初年度に得られた実験結果を再現させるとともに、より現実の隙間腐食に近い環境(隙間を薄くする場合や、バルク電解液のpHが中性付近)での振動反応をシミュレーションにより予測し、実験的に検証することを目指す。
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