2015 Fiscal Year Research-status Report
アレイ導波路格子の構築による単純マトリクス光励起型の透明ディスプレイの創製
Project/Area Number |
15K13818
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
渡邉 智 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (80579839)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アップコンバージョン発光 / 希土類元素含有ナノ粒子 / ソフトリソグラフィー / ポリマーアレイ導波路 / 近赤外光 / 透明ディスプレイ / 暗号セキュリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
航空機運航時にパイロットの計器への視点移動などによる事故発生リスクを低減するために、フロントパネル上に計器情報を投影するヘッドアップディスプレイが注目されている。光励起材料の1つである近赤外光を可視光に変換可能なアップコンバージョン発光材料は、発光層の透明度を著しく高くすることができるものの、ガルバノミラーや集光レンズなどの投影システムを必要とするために、ヘッドアップディスプレイのサイズ増加が避けられなかった。申請者らは、投影システムを必要としないフォトンマトリックス方式のアップコンバージョン発光透明ディスプレイを創出するために、アップコンバージョン発光層上にアレイ導波路を構築する研究を推進している。従来のアップコンバージョン発光層は、ゾルゲル法を用いて前駆体フィルムを作製し、500℃以上の焼成を経て作製する必要があったために、フレキシブルプラスチック基板上などへの作製が困難であった。申請者らは希土類元素含有セラミックスをナノ粒子化する技術に着目して希土類元素含有ナノ粒子フィルムでアップコンバージョン発光層を作製することでフレキシブルプラスチック基板上へアップコンバージョン発光層上を作製する技術を見出した。そこで、平成27年度はポリマーアレイ導波路をアップコンバージョン発光層上へ作製する技術を確立する研究を行った。ポリマーアレイ導波路の作製はソフトリソグラフィー法の1つである毛細管マイクロモールド法を用いた。ポリマーアレイ導波路アップコンバージョン発光デバイスが850 nmと1500nmの2波長近赤外レーザーを用いたフォトンマトリックス方式で駆動することができたので、高透明度フレキシブルディスプレイとして機能する可能性が示唆された。ディスプレイ応用の他に2組のアレイ導波路アップコンバージョン発光デバイスを組み合わせた暗号セキュリティーとしても駆動する可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、セラミックスアレイ導波路もしくはポリマーアレイ導波路をセラミックスアップコンバージョン発光層上に作製してフォトンマトリックス方式で新規フォトニックスデバイスを創出することを目的としている。シリカ系やチタン系のセラミックスアレイ導波路の作製を行ったところ、焼結後に導波路にクラックなどが形成するためにアレイ導波路の集積が難しかったので、ポリマーアレイ導波路に関する研究に絞って研究を進めた。当初予定していた青色と赤色発光する2波長型アップコンバージョン発光ナノ粒子を新規合成は共同研究者である東京理科大学のグループが合成技術を確立しつつあるので、申請者は、ポリマーアレイ導波路アップコンバージョンデバイスのデバイス応用に暗号セキュリティーを加えた研究を新たに行った。透明ディスプレイに関する研究は、2015年に開催された第57回高分子年次大会のプレス向け講演に選出され、新聞2件、テレビ放映1件に取り上げられた。このメディア放映を通して日本ゼオン(株)との共同研究がスタートした。日本ゼオンが有する高性能高屈折率シクロオレフィンポリマーを用いたフォトンマトリックス方式のフォトニクスデバイスを創出する研究も展開している。当初の申請内容とは、異なる方面での研究展開が進んでいるが、研究の進捗自身は極めて順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
フォトンマトリックス方式の透明ディスプレイ応用に関する目途が立ってきたので、暗号セキュリティーへの応用研究を主に進める予定である。形状とサイズを自在に制御したポリマーアレイ導波路を作製するために、高屈折率シクロオレフィンポリマーをインクジェット法や自己組織化技術を主に検討して行く。
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