2016 Fiscal Year Research-status Report
CT-FEA/3D造形法とナノ表面改質の融合による再生医療用材料最適設計法の確立
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15K13836
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (80274538)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体工学 / バイオメカニクス / 整形外科学 / 有限要素法 / 3次元プリンター |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,手のCT画像から3D指骨モデルを構築し,指骨の一部分を再生することを仮定して,指骨再生用のインプラントの設計・製造工程の基礎を確立することを目的とした.共同研究機関である佐賀大学附属病院から提供された手のCT画像を用いて,再生対象とする指骨の骨密度分布を考慮した有限要素モデルを構築し,曲げや引張り等の境界条件下での指の力学状態について情報を取得した.次に,指骨の外形状を抽出し,その外形を模擬した中空の海綿骨モデルを構築した.次に,内部に海綿骨を模擬した格子状構造を導入し,再生用インプラントの基本設計を行った.材料は3Dプリンターの原料となるPMMAを想定している.このインプラントのCADモデルを指骨モデルに挿入し応力解析を行ったところ,材料と骨の弾性率差に起因する応力集中が局所的にわずかに生じるものの,全体的には応力が比較的良好に分散していた.次に,3Dプリンターを用いて実構造体を試作し,設計状態でのインプラントが忠実に再現されていることを確認した. 一方,脊椎手術において椎間板の代替物として用いるケージについて,2種類の樹脂PEEKとPLAについて,CT画像から作成した2椎体モデルの間にケージを挿入したモデルによる応力解析で比較検討したところ,PLAケージはPEEKケージと同等の力学的適応能を有することが確認できた.そこで,射出成形型3Dプリンター(原料PLA)を用いて実構造ケージを作製し,実測した疑似的弾性率とCADモデルのFEAから推定した弾性率とがよい一致を示すことを確認した.以上,ポリマー材料を原料とする2種類の3Dプリンターを用いたカスタムメードによる指骨と椎間板再建用インプラント材料の新規設計・製造法の基礎を確立することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目的は、CT画像を利用した有限要素法(CT-FEM)、3D-CADおよび3Dプリンターを組み合わせた整形外科用インプラント作製のための基礎技術の確立であり、3D-CADによるデザイン設計とCT-FEMによる生体力学的適合性の確認技術の構築、ならびに整形外科用インプラントの生体構造的・力学的最適化の手法確立を、指骨再生用インプラントと脊椎椎間板用ポリマーケージに対してほぼ確立することができたと言える.特に、指骨再生用インプラントについては、皮質骨を模擬した表面構造と格子構造を利用した海綿骨構造の2層構造を模擬したインプラントの作製にも成功している.さらに,この指骨用インプラントを部分的に切り出した試験体を足場材料とし、間葉系幹細胞を用いて生体適合性の評価を試みたところ、細胞は順調に増殖し、生体適合性に優れることが明らかになった. 一方、椎間板用インプラントについては、実際に臨床で使用されているケージデザインを参考にしたケージを考案し、力学特性の最適化を行った.さらに、PLAを原料としする3Dプリンターを用いてケージを試作し、実測した疑似圧縮弾性率が有限要素解析による予測しと一致することが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
3D-CADによるインプラントのカスタムメイドによるデザイン設計とCT画像を利用した有限要素法による骨密度分布を考慮した力学解析を利用して、患者ごとに生体力学的適合性を有する骨再生用インプラントを設計し、3Dプリンターにより実構造体を作製する方法は、ほぼ確立できたと言えるが、3Dプリンターで使用できるポリマー材料がアクリル樹脂かポリ乳酸に限られており、これらの樹脂材料は生体適合性に優れ医療応用が進んでいるものの、材料的にかならずしも骨再生用として最適であるとは言えない.そこで、平成29年度は、骨再生能に優れるリン酸カルシウム系バイオセラミックスと生体適合性ポリマーの複合系材料および新規多孔質構造の開発を行い、カスタムメイドインプラントに骨再生能の機能を付与することを検討する.ひとつの指針としては、3Dプリンターを用いて外殻構造を作製し、内部に新たに開発する骨再生用複合材料の多孔質構造体を挿入することを検討する.また、多孔質構造と材料構成を最適化するために、間葉系幹細胞を用いた培養実験を行って、細胞の増殖状態、骨芽細胞への分化状態、細胞外基質の形成状態等を確認し、より最適な構造を決定していく.さらに、細胞の増殖や細胞外基質形成にともなう力学特性の変化を詳細に調査し、骨組織の形成を促進するような足場構造を決定する.
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Causes of Carryover |
3D-CADによるインプラントのデザイン設計、CT画像を利用した有限要素法による骨密度分布を考慮した応力解析、および生体適合性ポリマーを原料とする3Dプリンターによる実構造作製法を組み合わせた整形外科用カスタムメイドインプラントの設計製造方法はほぼ確立された.しかし、3Dプリンターで使用される原材料のポリマーは、必ずしも骨再生能に優れているとは言い難く、骨の主成分であるリン酸カルシウム系セラミックスの導入が必要であると考えた.そこで、次年度においては、より骨再生能に優れる複合系材料の開発と新規多孔質構造の開発を目的として研究を進めるための研究費として使用額が生じた.特に、間葉系幹細胞を用いた細胞実験関係の消耗品、各種計測に使用する消耗品、顕微鏡用消耗品等に研究費を使用する予定である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費の多くは新規骨再生用材料の開発費に費やされる予定である。また、一部の予算は関連学会への旅費、参加費としても使用する予定である.具体的には、リン酸カルシウムや生体適合性ポリマーの原材料費、材料の作製工程で必要となる薬品や容器等の材料作製実験関係の消耗品、力学特性評価のための各種試験用消耗品、顕微鏡観察のための各種消耗品、さらには細胞培養実験に使用する細胞、各種薬品、細胞関連の測定のための消耗品を購入する.
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Research Products
(3 results)