2015 Fiscal Year Research-status Report
放電回路の共振を利用した非接触給電による高速工具回転放電加工法の研究
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15K13843
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國枝 正典 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90178012)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放電加工 / 微細加工 / 非接触給電 / 静電誘導給電 / 高速工具回転 |
Outline of Annual Research Achievements |
放電加工において、加工屑の排出や極間冷却のために工具電極の回転が効果的である。しかし、高速回転する工具電極にブラシを用いて給電することは困難である。そこで、回転スピンドルと同軸に円筒状の給電電極を配置し、非接触給電する方法を考案した。スピンドルと給電電極との間隙に形成される容量Cは数十pF程度であるため、回路のインダクタンスLとCとで形成される共振を利用し、共振周波数に等しい高周波電圧を印加し、大きなエネルギーで放電を生じさせることができた。また、放電位置を分散させ、放電痕の大きさを均一にするため、絶縁破壊が生じてから一定時間経過後に高周波電圧の印加を止めるための制御回路も製作した。これによって、小さな容量Cを用いて、一般の微細放電加工と同等のエネルギーの放電を断続的に生じさせることができた。 しかし、それでもまだ、金型加工に使用されるような普通の大きさの放電エネルギーを得るには、給電容量Cを大きくする必要がある。スピンドルと給電電極の隙間は50ミクロンであり、それ以上小さくすることは困難である。また、円筒状の給電電極の長さを大きくすると、スピンドルの振れ回りが大きくなる。そこで、給電電極の直径を大きくする方法、ならびに給電電極の形状をラビリンス構造とする方法によって、給電面積の増大を試みた。その結果、ラビリンス構造とすることで、単純な円筒状の給電電極に比べて二分の一の長さで2倍の給電容量(約200pF)を実現できた。また、給電間隙を空気より誘電率の大きなエタノールで満たすことにより、Cが十倍以上に増大した。しかし、エタノールは蒸発しやすいので、安定した給電を続けることが困難であった。 最後に、直径の大きな円筒状の給電電極を用いて微細穴加工を行い、工具電極の回転速度が800rpmから3000rpmに増大することによって、加工速度が2倍以上に増大するを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回転するスピンドルと円筒状の給電電極の隙間に形成される容量を利用して高周波電流を給電し、高周波給電の持続時間を一定に制御するシステムを構築した。また、実際にこのシステムを用いて放電加工を行うことができた。 さらに、給電電極の寸法や幾何学的な形状に工夫を加えて給電容量を増大し、より大きな放電エネルギーで加工することに成功した。特に、ラビリンス構造の給電電極はサイズがコンパクトでありながら大きな放電電流を供給できる。また、給電電極の隙間を誘電率の大きな液体で充填することによっても放電エネルギーを増大できることを示したことは、当初の予定以上の成果である。 また、実際に非接触給電により加工を行い、回転数が加工速度を増大させる効果があることを実証した。装置の制限があり、回転数は最大で3,000rpmであった。これは当初の予定の80,000rpmには届かなかったが、提案する原理の有効性は証明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した非接触給電装置を用いて穴加工を行い、工具の回転速度が加工速度、真直度、得られる最大のアスペクト比に及ぼす影響を詳細に調べる。また、回転速度を80,000rpmまで増大できるように装置の改良を行う。 現在は工具電極の送り速度は一定で加工を行っているが、加工安定性の向上や加工速度の向上のためにはサーボ送りが必要である。そこで、放電間隙の極間電圧を非接触で測定し、工具電極のサーボ送りを行うためのシステムを製作する。 次に、穴加工に限らず軸加工を行ない、軸の回転速度が加工特性、ならびに加工できる軸直径の微細化限界に及ぼす影響を調べる。
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Causes of Carryover |
新しい給電電極の開発や、理論の検証のための基礎実験を多く行ったため、工具回転速度の上限を3,000rpmに抑えた。よって、実験装置の大幅な改良をしなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
工具回転速度を80,000rpmに増大させるため、高速回転スピンドルを購入し、高速回転スピンドルへの非接触給電装置を設計製作する。そのための備品費と制作費に使用する。
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Research Products
(4 results)