2017 Fiscal Year Research-status Report
世界初,癌腫瘍を治療・再発予防する磁性マイクロカプセルインプラント製造法の確立
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15K13851
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
谷口 幸典 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10413816)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粉末成形 / 絞り加工 / 個別要素法 / マイクロフォーミング |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄-コバルト粉末を内包したチタンカプセルインプラントの生産手法として,代表者が発明した特許「箔の絞り加工」の原理を用いた試作カプセル生産用ダイセットを構築するための実験を遂行した.工具形状の最適化実験を行い,ダイ開口径を穴径の1.5倍に,テーパアングルを50~55°とすることが有効であることを個別要素法数値解析により立証(国際会議APMA2017〔台湾〕プロシーディングにて公表)するとともに,試作カプセルの性能評価のための磁性体の発熱実験装置を試作した.平成29年度は最適寸法の工具を作成したうえで,絞り径をφ2.0から製品寸法であるφ0.8まで段階的に成形してTiブランクの絞り比の向上を図る試作カプセル生産用ダイセットを開発するため,パンチ径を途中で変更した場合の面圧増分の変化が絞り高さに及ぼす影響を実験とシミュレーションの双方で検討した.その結果,パンチ径を増加させることでしわ押さえ力が適切となり,絞り高さが増加する効果が得られることがわかった.一方,パンチ径を減少させる場合は粉末粒子の流動が促進された.最終的に,成形パス間で大小パンチを交互に変更しつつ全体の面圧増分を一定とするような多段成形条件で生産手法として最適化できることが示唆される結果が得られた.しかし後述の理由により生産用ダイセットの構築は完了できなかった. 加えて,粉末を媒介したTi箔の絞り加工の数値解析手法としてこれまでの個別要素法解析に加えて有限要素法解析環境を構築した.降伏条件の材料特性パラメータの同定のために一面せん断試験など一連の材料試験を行い,鉄粉末のせん断挙動を明らかとした.これによりTi箔の破断箇所の同定と絞り挙動に及ぼすしわ押さえ力の変化の関係を調査することが可能となった.これら知見をまとめて,国際会議TSME2018にて公表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試作カプセル生産手法は2セットのパンチ-ダイ交換機構を有するダイセットで確立できることがわかり,その設計製作と試作カプセルの性能確認をもって本研究課題を終了する予定であった.しかしながら,年度当初から10月に至るまでの期間,実験室改修工事のため仮実験室にて研究を遂行する必要があり,加えて,所属部局にて退職・転出により2名の欠員(年度内に補充されず)が生じたことで業務が繁忙を極めたため,ダイセット構築と試作カプセルの性能評価が完了できなかった.そのため1年間の延長申請を行うことが適切と判断した.なお,実験装置が使用不可の期間において前述のとおり有限要素法解析環境の構築を図った.その成果として,逐次的な粒子の充填挙動と流動挙動については再現性が乏しいものの,Ti箔の変形挙動については実験結果をより精確に再現でき,特にTi箔の破断箇所の同定とその回避方策を検討できることがわかった.よって延長期間においてTi箔の初期厚さの影響やしわ押さえ力の適正化条件を解析により明らかとし,再絞りの際の加工限界の向上を図っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
実験室改修の影響で進捗は遅れることとなったが,パンチ-ダイ交換機構を有する生産用ダイセットの設計はほぼ完了することができたので,延長期間においてそれを構築してFe-Co粉末粒子を内包したφ0.8の試作カプセル生産実験を完了する.その際,有限要素法解析結果から本手法におけるしわ押さえ状況の適正化を実現する.試作カプセルについて磁気特性調査および発熱実験を実施してその性能を検証する.磁気特性調査は奈良先端科学技術大学院大学物質創生化学領域ナノ構造磁気科学研究室の細糸信好准教授の所有機器を利用することができる.発熱性能についてはこれまでの装置で試作成功したφ1.0×1.0mmカプセルで既に良好な性能を得ているが,φ0.8の場合にどれだけの絞り長さが必要となるかを実証する必要がある.
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Causes of Carryover |
平成29年度を最終年度として試作カプセル生産用ダイセットの設計製作を完了する予定であったが,実験室の改修工事により進捗が遅れることとなったため. 1年間の延長期間にて次年度使用額をダイセットの構築費用と発熱実験実施のための諸費用に充てる.
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