2015 Fiscal Year Research-status Report
移動体面上に発生するせん断応力の高精度計測に向けた画像計測技術の新展開
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15K13871
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
望月 信介 山口大学, 理工学研究科, 教授 (70190957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 博貴 山口大学, 理工学研究科, 助教 (10626873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流体計測 / 壁面せん断応力 / 非接触計測 / 感温液晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
感温液晶と画像計測を使用することにより壁面せん断応力の非接触計測技術の開発が本研究の目的である。この技術は風車翼面などの従来の計測技術では困難とされる計測を実現するものである。 計測技術の開発は二次元乱流チャネル流を用いて行われている。まず、標準となる二次元チャネル乱流を作成し、流れ場の発達を確認する。確認は対数速度分布の成立と局所壁面摩擦抵抗係数のレイノルズ数に対する依存に基づき行う。 十分に発達した流れ場の壁面に感温液晶とヒーターを設置し、浮力が発生しない程度に加熱を行う。流れにより感温液晶表面の温度変化が生じ、それをCCDカメラで撮影し、Hue値に変換する。変換されたHue値と圧力勾配から決定された壁面せん断応力とのキャリブレーション曲線を求め、計測に応用する。計測原理は、伝熱現象により変化した壁面温度を感温液晶と色相技術を用いて計測し、その原因である壁面せん断応力に関係づけるものである。 研究においては、感度を向上させる手法と計測のレンジ幅を大きくする方法とを試みた。感度を向上させるため、微小プレートによる流れ場の撹乱を導入した。一方、計測レンジの拡大のため、ニクロム薄膜を加熱要素として採用した。 キャリブレーション曲線の一般性の向上のため、熱と運動量の輸送のアナロジーを利用することを計画していた。従来から、このアナロジーに基づくと、壁面温度変化は壁面せん断応力の1/3乗に比例することが指摘されており、その現象の確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
標準となる流れ場の確認、感温液晶を設置したセンサの製作と配置、液晶表面の色計測とHue値への返還による温度との関係の決定は早期に完了した。平均速度および乱れ強さ分布、および局所壁面摩擦抵抗係数の計測に基づき、標準的な流れ場であることを確認した。熱電対を用いて加熱した液晶表面温度を計測し、CCDカメラで撮影した画像のHue変換値との対応付けを行い、画像計測により液晶表面温度の計測が可能であることを確認した。 2種類の計測センサーユニットを製作し、流れ場に設置し、実験を行った。一つは比較的大きな要素に感温液晶を張り付け、その上に微小な板を置いたものである。これは本研究室で開発したサブレイヤープレートにヒントを得たものであり、はく離現象を利用した感度増幅を狙ったものである。もう一方は、ニクロム薄膜に感温液晶を張り付けたもので、比較的広い範囲、つまりダイナミックレンジの拡大を狙ったものである。これらを二次元チャネル乱流の流れ場が発達した部分に設置し、加熱を行い、表面温度を画像計測した。得られた表面温度と圧力勾配から決定された壁面せん断応力の関係をグラフ化し、その依存性の吟味と解釈を行った。 両方法ともに、輸送のアナロジーに基づいて指摘されている1/3乗則に従った変化を行うことが確認された。また、それぞれの方法は目的に応じて角度検知向上と計測範囲拡大とをほぼ満足する結果を示した。角度検知向上を目指した微小板を張り付けたセンサはレイノルズ数の低い範囲でレイノルズ数の依存を示し、温度境界層の発達の影響が議論された。 結果は当初の計画以上のものであり、国際会議と国内会議の2つの学会において報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目においてセンサ性能の向上と研究のまとめを行う予定である。主には2つの項目を調査する。 1.レイノルズ数依存性の確認 レイノルズ数が低い場合、壁面温度と壁面せん断応力との関係がレイノルズ数が高い場合のキャリブレーション結果から逸脱している。より広いレイノルズ数範囲に用いるためにはこの依存性の原因を解明し、補正を行う必要がある。この原因として、感度向上を図ったセンサははく離再付着現象、計測範囲拡大を図ったセンサは温度境界層厚さの増加を予想している。前者においては、はく離点、再付着点の位置を流れの可視化から確認し、レイノルズ数推移への依存を解明する予定である。後者については温度境界層の発達の予測を行い、速度境界層との比率を確認する予定である。 2.角度分解能の向上 この研究の基となったサブレイヤープレートは壁面せん断応力の方向検知について、極めて高い性能を持つことが分かっている。この感温液晶を用いた非接触計測においても、異なる形状を持つ微小板を用いて、壁面せん断応力の方向検知の可能性とその向上を試みる。志向性のある形状としてサブレイヤープレートで用いられている長方形、無志向性の形状として円形を計画している。円形は360°どの方向からの流れの検知を同じ条件で行うことができ、風車翼面上などの3次元流場の計測が可能となる。
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Causes of Carryover |
主なものとして、調査研究および成果報告のための旅費が予定よりも少額となった。旅費が予定を下回った理由は成果報告のために参加した学会が比較的近い愛媛大学で開催され、交通手段が船舶や在来線の利用により安価であったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
比較的少額であるため、物品費(消耗品費)として液晶シートおよびアクリル部材の購入に使用する計画である。
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