2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13876
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高比良 裕之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80206870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流体工学 / 気泡 / 血管 / 非線形振動 / 固有振動数 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内での単一球形気泡の力学モデルを完成させるとともに,二個の球形気泡の力学モデルへと拡張した.気泡の力学モデルと管壁とを連成した三次元境界要素法を用いた固有値解析手法を構築し,弾性管内での気泡の線形振動特性を解析した.まず,支配方程式を線形化することにより,単一ならびに二個の気泡と弾性管を連成した特性方程式を導出し,気泡の共振周波数について調査した.その結果,単一気泡の共振周波数は,管壁の質量が十分に重い時には,管長が長くなるにつれて単調に減少するが,管壁の質量が軽い時には,管長が長くなってもあまり変化しないことが示された.また,管壁の質量が重い時には,気泡初期位置が管壁に近づくにつれて共振周波数は低下するが,逆に管壁の質量が軽い時には,気泡初期位置が管壁に近づくにつれて共振周波数は上昇すること,そのため,共振振動数がほとんど初期位置に依存しない管壁質量が存在することが明らかとなった.さらに,二個の気泡に関して,二個の気泡が同位相で振動するモードと逆位相で振動するモードが得られた.二個の気泡が同位相で振動する際,管壁も気泡と同位相で振動すること,また,二個の気泡が逆位相で振動する場合には,管壁の振動は左半分と右半分とで位相が反転し,管壁はそれぞれの側にある気泡と同位相で振動することが示された. また,気泡変形と並進移動を考慮した三次元境界要素法を用いて,弾性管内での二個の気泡の自由振動を解析した結果,上述の気泡モデルを用いた線形理論により得られた固有振動数は,本直接数値計算結果と良く一致することが確認された. さらに,定在音場および加圧した圧力場において同一の音響性リポソーム(ALs)を観測した結果,ALs表面に3~6次の表面振動がパラメータ励振の機構で起こっていること,脂質膜の効果により,表面張力が低下している可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管内での単一球形気泡の力学モデルを完成させるとともに,二個の球形気泡の力学モデルへの拡張に成功した.そして,気泡の力学モデルと管壁とを連成した三次元境界要素法を用いた固有値解析手法を確立し,弾性管内での気泡の線形振動特性を解析した.本理論解析結果と数値計算結果とを比較したところ,両者は良好に一致したことから,本解析の妥当性が示された.さらに,実際に血管内に注入する音響性リポソーム(脂質膜で覆われたマイクロバブル)の振動特性を実験的に調査し,特徴的な表面振動の発生が確認された.以上の成果により,研究は概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築した血管内での二個の気泡モデルを完成させるとともに,N個の気泡モデルへと拡張する.本モデルは,気泡の体積振動を点ソースで,並進運動を二重わき出しで表現し,バネ―質量系で表現された管壁の振動と連成したものである.そして,血管内での体心立方構造に配置された9個の気泡などの代表的な気泡群の系について,気泡変形を考慮した直接数値解析との比較により,解析モデルの妥当性を検討する.次に,種々の気泡配置のもとでの,系の固有振動数と固有ベクトルを求め,血管壁の弾性特性が気泡の振動特性に及ぼす影響を調査する.さらに,血管内での気泡群の非線形振動特性を数値解析し,超音波の振動数や振幅が気泡群の挙動に及ぼす影響を明らかにする.あわせて,本解析モデルを拡張し,球面調和関数の利用により,気泡変形を取り扱うことが可能な解析手法を構築する. 内部気体の熱移動が気泡の固有振動数および減衰率に及ぼす影響を「有効ポリトロープ指数」,「有効粘性係数」の形で気泡群の運動方程式に組み込むことにより,熱移動を考慮した気泡群モデルを構築し,系の固有振動数を導出する.また,本モデルを用いて,HIFUにおける液体および血管壁の温度上昇を予測する. また,前年度行った実際に血管内に注入する音響性リポソーム(脂質膜で覆われたマイクロバブル)の実験により,マイクロバブルに特徴的な表面振動が生じることが明らかとなった.そのため,本年度は,実験を継続して,マイクロバブルの表面性状と表面振動との関係を調査する.さらに,境界要素法を用いた数値計算により,実験を検証するとともに,マイクロバブルの表面振動の発生機構を調査する. さらに,上記研究の成果を取りまとめて,研究発表を行う.
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに予算を執行したが,消耗品の購入を控えたためわずかに残金(303円)が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
わずかに(303円)使用額が,当初使用予定額よりも少なかった.残高は,次年度の消耗品の購入に充てる計画である.
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