2015 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素貯留に向けたCO2ハイドレート生成・成長のその場計測
Project/Area Number |
15K13879
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
阿部 豊 筑波大学, システム情報系, 教授 (10241720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 暁子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40396940)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物質輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
CO2を大気から隔離し海洋に貯留する地球温暖化対策技術は、地中に隔離するそれの1万倍程度の処理能力を有しているとされている。深海底においてはCO2ハイドレートとの呼ばれる水接飽和物が生成し、それを応用する技術は生態系への影響低減も期待されている。代表者らの先行研究はこれまで、ハイドレート膜厚を計測する一方で、物質輸送に基づいたマクロスケールの膜厚予測モデルを構築してきた。その結果、ハイドレート生成時の膜厚は、CO2溶解度の二元性に基づき、水中におけるCO2過飽和分から算出することで実験結果と良い一致を示した。すなわち、境界層内におけるCO2溶解量が膜厚を支配的に働く可能性を示唆した。また成長予測モデルにおいても、ハイドレート膜内部の分子拡散係数を適切に推定できれば、実験結果と良い一致を示す所まできた。しかしながら、膜生成に伴う周囲CO2濃度場変化は明らかとなっておらず、また過去の研究において、膜内部の数値計算結果と実験結果とを比較した結果はないのが現状である。 本研究は、ハイドレート膜生成に伴う周囲CO2濃度場変化の観測し、膜生成時の非定常状態モデルを構築する。また同時に膜内部の分子シミュレーションを行い、ハイドレート構成分子それぞれの拡散性を詳細に計算する。実験結果と計算結果のそれぞれを融合することで、非定常性を考慮し、かつ分子スケールまで考慮した膜厚予測モデルを構築するものである。 今年度行った液体CO2溶解実験とハイドレート生成実験の結果、液体CO2の溶解挙動、物質移動係数ならびに水中におけるCO2溶解度の経時変化、さらに染料のハイドレート膜透過についての実験的治知見を取得した。また分子シミュレーションによる計算の結果、ハイドレート内部の構造変化(分子欠損)と分子拡散性の相関を得た。計算結果と実験結果から、理想的な分子構造と異なる構造を有している可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規に製作した実験装置を用いて、高圧条件下での液体CO2溶解可視化実験と、分子シミュレーションを併行して行ってきた。可視化実験においてはpH指示薬による色相の変化を動画で取得することで、水中におけるCO2の溶解過程を視覚的に撮影することに成功した。さらにハイドレート膜生成実験においては液体CO2と水の領域を広範囲で撮影が可能となり、水に溶解したpH指示薬の液体CO2側への移動を初めて計測した。分子シミュレーションでは構造の欠損に伴って分子拡散性が増加し、実験で得られたpH指示薬の膜透過と合わせて、実際のハイドレート膜内部で欠損が存在する可能性を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で行った液体CO2溶解実験では、未だ撮影精度相当の誤差が含まれている。ハイドレート成膜メカニズムとして、CO2濃度場計測をより詳細な計測を行っていくとともに、LIF計測による同期計測手法の確立を行う。実験と併行して、分子シミュレーションに用いる計算体系の拡張を遂行し、分子構造と膜内部における分子拡散性の相関を明らかにする。実験とシミュレーションにより得られた結果を組み込むことで、より広範囲の時空間スケールに適応可能な膜厚予測モデルの構築してゆく。
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Research Products
(3 results)