2015 Fiscal Year Research-status Report
スピン秩序および極性制御による高効率太陽光エネルギー変換
Project/Area Number |
15K13940
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田畑 仁 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00263319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エネルギー変換 / 太陽光 / スピン秩序 / 極性制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光エネルギーを有効活用は、エネルギー問題解決の至上命題のひとつとなっている。その中で、p-n接合による従来型太陽電池とは別の視点から、光合成にヒントを得た半導体光電極を用いた湿式太陽光エネルギー変換素子(光触媒、太陽電池/Gratzel-Cell:Nature 1991、理論的変換効率33%)の研究開発が世界中で精力的に進められている。しかし太陽光の約半分を占める近赤外より長波長領域の光を十分に利用できていない問題点の解決が切望されている。 本研究では、地球上(地表付近)での資源的豊富指標であるクラーク数が1番の酸素と4番の鉄の化合物(鉄酸化物系)を活用して、人・環境に調和した新規太陽光エネルギー変換システムに挑戦する。汎用型太陽電池であるp-n接合系に留まらず、光合成原理に倣った人工光合成系への拡張を実現するため、鉄酸化物の中でバンドギャップが太陽光の最大エネルギー波長に合致したα-Fe2O3の光電極高機能化を目指す。極性結晶の有する自発分極ンドギャップの狭帯化による近赤外光領域の利用拡張、さらに従来の太陽電池では着目されなかったスピン秩序制御による励起キャリアの長寿命化を実現し、新しい高機能太陽光エネルギー変換素子の創製に挑戦する。 1年目して、次の2項目を実施した。(1)バンドエンジニアリングによる光電変換効率(光吸収帯域)の改善:カチオンサイト(Feサイト)置換による伝導帯レベル制御とアニオンサイト(酸素サイト)置換による価電子レベル制御によりバンド狭帯域化。(2)極性結晶層のヘテロ積層による水素発生(水の光分解)の高効率化:ZnO層の極性結晶を活用し、その自発分極およびピエゾ分極による自己バイアス電荷印加効果によるバンドベンディングを活用することで、光触媒機能(水素発生)確認。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究期間中に(1)-(3)の3項目の研究実施を計画。1年目のの研究に因り、項目(1)および項目(2)半ばの研究内容を実施済みである。従って、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目には、極性結晶層のヘテロ積層による水素発生(水の光分解)の高効率化において、ZnOの極性結晶を活用したが、今後は他の物質系(極性物質:例えばFeO系層状物質)の自発分極およびピエゾ分極による自己バイアス電荷印加効果によるバンドベンディングを活用することで、さらなる光触媒機能(水素発生)高効率化をめざす。 さらに、スピン秩序制御による励起長寿命化および光キャリア輸送能の向上の項目について、電子-正孔分離能向上と、励起三重項状態を利用した励起キャリア長寿命化による 太陽光エネルギー変換の高効率化。
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