2016 Fiscal Year Research-status Report
磁性ガーネットの酸素欠損濃度と磁気異方性の電気的制御の研究
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15K13942
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
清水 大雅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345170)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 / 電子・電気材料 / スピンエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性ガーネット薄膜において抵抗変化現象を観測するため、還元性の金属であるTiを電極とする通電用試料を作製した。絶縁性材料である磁性ガーネット薄膜上へ帯電防止剤を塗布し電子ビーム描画し電極パターンを形成した。電極の形状は300μm×300 μmの正方形とし、電極間距離を1,5,10,15μmの4種類とした。現像後EB蒸着によりTi 10 nm / Au 50 nmを蒸着し、リフトオフにより電極を作製した。I-V特性を測定し、抵抗及び抵抗率を測定した。磁性ガーネット製膜時に酸素を導入しなかった試料①では、酸素を導入して製膜した試料②より約25倍大きい電流が流れた。これはCe:YIG試料中に酸素欠損が生じてFe, Ceイオンの価数が変わり不純物準位が形成され、ホッピング伝導により電流が流れやすくなったためであると考えられる。 さらに、Ce:YIG-Ti界面の接触抵抗を減少させることを目的として、電極形成後の試料を窒素雰囲気中にて200、300、400℃で10分間アニールし、I-V測定を行った。酸素流量比0%の試料①は、アニール温度を増加させると抵抗値が増加することがわかった。一方、酸素流量比1%の試料②は、試料①と同様にアニール温度の上昇に伴って抵抗値が増加した。しかし、酸素流量比0%の試料①に比べて抵抗値の上昇は小さかった。試料①において抵抗が大きく増加した原因は製膜時に導入された酸素欠損がアニールによって補償されたためと考えられる。同様な測定をCeを導入しないYIG試料に対して行ったところ、酸素を導入せずに製膜した試料③が酸素を導入して製膜した試料④と比較して10の6乗倍大きな電流が流れることがわかった。また試料①,③はそれぞれ②,④と比較して強い面内磁気異方性を示すことがわかった。磁性ガーネット薄膜製膜時の酸素導入の有無によって抵抗と磁気異方性が異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性ガーネット薄膜に通電するプロセスを確立し、抵抗変化現象を測定するための準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果に基づき、試料中のFeイオンの価数を評価し、抵抗変化現象に伴う磁気異方性の電気的制御を目指す。具体的には抵抗変化現象に用いられる材料に関する研究例を参考に電極に使用する金属をTiから他の金属(Ni等)に変更し、抵抗変化現象の観測を目指す。
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Causes of Carryover |
絶縁性の磁性ガーネット基板上に電子線描画装置によって電極パターンを形成するために、消耗品を購入するかどうかを検討していた。しかし、年度末に当該消耗品を購入せずに電極パターンを形成する目途がたったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
電極を形成する材料の購入などに充てる。
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